4月1日の改正大気汚染防止法(大防法)施行により、アスベスト(石綿)規制が強化されるが、じつは関連する廃棄物規制は逆に「緩和」される。しかも国のずさんな対応が現場レベルで上乗せ実施されている安全対策をつぶす可能性が出ている。(井部正之)
◆現場レベルで上乗せ対応
現在アスベストを含む廃棄物は、廃棄物処理法(廃掃法)により「特別管理産業廃棄物(特管産廃)」の「廃石綿等」または「石綿含有廃棄物」の2つがあり、吹き付けアスベストなどの除去物などが該当する「廃石綿等」は、飛散性がとくに高いことから特管産廃として、通常よりも厳しい管理が求められている。
じつは昨年5月末の大防法改正に関連した廃掃法の改正はされていない。だが、大防法や労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)に仕上塗材が新たな区分として規定された結果、外壁や天井などに使用される「仕上塗材」(セメントや合成樹脂などの結合材・顔料・骨材などで構成する仕上施工)のうち、「吹き付け施工」されたものが「廃石綿等」から「石綿含有廃棄物」に規制緩和される。
一方、現場レベルではかねて吹き付け施工か否かにかかわらず、仕上塗材の除去で発生した廃棄物についてすべて「廃石綿等」として処分してきた実態がある。
仕上塗材の除去では電動工具などで削り取ることが多く、その場合アスベストを含む粉状の廃棄物が発生する。最近は超高圧水で削り取る手法が増えているが、その際にはアスベストを含む汚泥が出る。粉状であれば、建材を割らずにそのまま撤去したのと違って当然飛散しやすい。汚泥状でも乾燥すれば同様に飛散する。
また作業時は専用の防じんマスクだけでなく防護服を着用する場合もあり、マスクフィルターや防護服にはアスベストが付着する。現場の養生に使ったプラスチックシートも同様だ。
同じ仕上塗材を同じ工法で除去しているにもかかわらず、当時吹き付け施工でなかったというだけの理由で「廃石綿等」としての扱いから外し、専用の2重袋に入れず、規制上は梱包すら不要で極論すればトラックに直積みしてもよい(一般的な飛散防止義務はある)と大幅規制緩和することの合理的な説明ができないからだ。安全対策を省略すれば、以前よりアスベストを吸うリスクが増えることになる。