2020年8月末出された布告文。「鴨緑江、豆満江の我が川岸に侵入した対象と家畜は予告なしに射撃する」とあった。写真アジアプレス

◆将校の家族まで外出制限

将校の家族も民間人との接触が厳しく禁止されている。

A氏によれば、「将校の妻は市場に行くこともできない。妻らは『家族小隊』と呼ばれる班に束ねられて統制を受けるが、必要な買い物は、週に一回「家族小隊」から選抜された2~3人を市場に行かせるという徹底ぶりだ」という。

一方で、厳格なコロナ防疫対応を始めて1年以上が経つのに、咸鏡北道の軍部隊では、衛生防疫のための資材と装備は今も貧弱なままのようだ。協力者A氏に情報提供した軍関係者は次のように述べたという。

・部隊内ではヨモギを焚いて消毒している。
・換気と手洗いは厳しく指示されているが冬季もお湯は出ない。
・頻繁な手洗いによる乾燥を防ぐ意味もあって、兵士には小便で手洗いするものがいる。
・体温計は中国製のものが1中隊当たり1個供給されている。
・衛生兵が将兵の体温を毎日測定するが、発熱や咳などの症状が出ただけで隔離部屋に収容される。
・PCR検査は部隊では実施されていないようだ。

1月上旬に開催された労働党第8回大会の映像を見ると、金正恩氏が出席した会議でマスクを付けた人は皆無だった。軍事パレードや、その後の金正恩氏との記念写真撮影でも、数千人規模の兵士たちにマスク姿はいない。

コロナ感染の有無を確認するPCR検査は、金正恩氏と接触する可能性がある人とその周辺広くで、常時徹底されているはずだ。一方で、地方の軍部隊のコロナ防疫のための資材と装備はあまりに貧弱。そのため、過剰で強引な隔離が続いていると考えられる。

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