◆農村に配置させると子々孫々まで抜け出せない
北朝鮮で最下層の職業とみなされているのは農業だ。自分の土地などもちろんなく、収穫のほとんどは国家に納めなければならず、取り分(分配)は少ない。商行為をする機会が限られているため、現金収入も乏しい。貧しく発展の可能性が閉じられた職業だとみなされているのだ。さらに農村に生まれると、子々孫々までが一生を協同農場員として過ごさなければならない。脱出困難な階級制度である。
そのため、農村の親も若者も、何とかして離脱を考える。これを「階級を変える」と言う。女性の場合は、都市労働者と結婚すれば離農できる可能性がある。男性の場合は、軍服務を終え社会に配置される時がほぼ唯一の「階級変更」のチャンスだ。どのようにするのだろうか?調査した協力者は次のように言う。
「農村出身の兵士たちは、服務期間の延長を自ら申請して下級将校や技術兵士になって都市への配置に挑戦する。5~10年間も延長して兵営に留まる者もざらだ。しかし今年は、このような方法で『無理配置』を避けるのも難しくなった。農村が女ばかりで男が少ないため、中央の強力な指示で、農村出身の兵士は無条件に故郷に配置している」
除隊軍人の親たちも不満を口にしている。協力者は、次のような親の声を伝えてきている。
「息子を軍隊に行かせることよりも、『無理配置』で農場に行かされる方が辛い。せっかく育てた子どもを、国が勝手に進路を決めるのはあんまりだ」
◆労働党入党も曖昧に
過酷な超長期の軍隊生活の「対価」のひとつは、兵役を務め上げると優先的に労働党への入党推薦が得られることだった。党員になることは出世の絶対条件だからだ。しかし、今年は一度に大量の除隊者が出ることと、1月の党大会で党員資格を厳格化する方針が出たため、除隊即入党とはならないという。
「当局は『集団進出』で配置された職場でまじめに働けば入党できると誘導している」と協力者は述べる。
少なめに見積もって北朝鮮軍の兵員数を70万、除隊対象を20%とすると、今春14万人の若者が社会復帰する。不満を抱えた大量の除隊軍人を、金正恩政権はうまく包摂、あるいは統制できるだろうか。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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