(参考写真) 検問所で青い制服の交通保安員が監視の目を光らせる。2011年1月平安南道にて撮影キム・ドンチョル(アジアプレス)

◆「非社会主義との闘い」名目にプライバシー無視

金正恩政権が「非社会主義現象との闘い」の一環として、国内携帯電話に対する検閲をかつてない強度で実施している。デジタル機器を通じて不都合な情報が拡散することを警戒してのことだ。メールや写真をひとつずつ確認する物々しさだ。(カン・ジウォン/石丸次郎

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「とにかく電話の中を見せよと、街中の検問所でだけでなく市場や職場でも、手当たり次第に『手電話』(携帯電話のこと)検閲をしている。安全員(警察官)や糾察隊(風紀取り締まり組織)や幹部たちも検閲対象の例外ではない」

北部の平安北道(ピョンアンプクド)に住む取材協力者が4月中旬、このように伝えてきた。咸鏡北道(ハムギョンプクド)や両江道(リャンガンド)の協力者からも、まったく同様の報告が来ている。

携帯電話に対する検閲は2019年後半から始まっていたが、今年1月の労働党第8回大会を経て2月頃から強度が一気に高まった。どんなやり方なのだろうか? 両江道の取材協力者は次のように説明する。

「『手電話』に残る『通報文』(ショートメール)と写真、動画をチェックします。電話機で家族写真を撮ることもあるじゃないですか。そんなものまで全て調べ、怪しい点が些細でも見つかれば電話機を取り上げて、機器の専門部署で過去に消去したものまで復元します」

当局が警戒しているのは二つある。まず、この10数年間に若者の間で流行した韓国をはじめとする外部文化だ。DVDやUSBと並んで携帯端末が拡散の媒体になっているためだ。

北朝鮮の新型スマホ「プルンハヌル」(青い空)。写真と動画の撮影が可能だがネット接続は完全不能にしてある。(アジアプレス)

 

◆経済悪化で不穏情報の拡大を警戒

二つ目は国内の情報流通だ。新型コロナウイルス対策で中国国境を封鎖、国内でも厳格な移動規制を行ったため経済悪化は極めて深刻で、一部脆弱層に餓死、病死する人も発生している。窃盗、強盗、覚醒剤密売、売春などの犯罪が増えた。コロナ事態がいつ収束するか先が見えず、社会に不安心理が漂っている。このような世相の中で、国民がどのような情報を共有・拡散させているのか、監視しようというわけだ。

「市場に『流言飛語行為を無くすことについて』という公示が張り出された。民心を乱したり、意図的に嘘を広げるのは敵共を助ける行為だ、確認されていない内容を耳にしたら安全局に申告せよという内容だ。最近は市場周辺を、銃を持った安全局の機動隊が巡回している。治安維持のためだと言っているが、住民に恐怖を与えようとしているのではないか」

両江道の協力者はこのように言う。

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