アスベスト(石綿)の含有が確認された珪藻土(けいそうど)バスマットなど約9万個が廃棄された可能性が高いことが明らかになった。家庭ごみとして排出されたとみられ、収集運搬にたずさわった作業員の曝露が懸念される。(井部正之)
◆ニトリ、カインズなど「廃棄」確認
2020年11月以降、アスベストの含有が明らかになった珪藻土製品の自主回収を発表した輸入・製造・販売者は6社。対象は計391万966個に上る。
このうち販売数がもっとも多いニトリホールディングスは5月27日、355万4073個のうち、114万個超を回収済みで、回収率は32%超と書面で説明する。じつはこの回収数には購入者が廃棄してしまっていて、実際には未回収のものも含まれており、その数は約9万個に上る(回収数の約7.9%)。回収数が水増しされていることになるが、その問題はひとまず置いておく。
同社は3月5日時点で7万9224個(回収数の約8%)が廃棄済みと答えており、2カ月あまりで約1万個増えたことになる。廃棄率は2カ月あまりでほぼ変わっていない。仮に今後も同様だとすれば、かなり乱暴な試算だが28万個超(1個1キロ計算で約280トン超)が廃棄されたことになる。
ほかにもカインズ広報部は購入者が「廃棄した」と連絡した事例があることは認めるが、「廃棄した数にかんしては把握できておりません」と回答した。エイベクト(鳥取県米子市)も数件だが廃棄してしまったと購入者から伝えられたという。
廃棄先についてははっきりしないが、アスベスト入りであることを知らなかった以上、家庭ごみとして自治体のごみ収集ルートに乗った可能性が高いことは環境省も認める。産業廃棄物として処分する必然性がなく、また仮にそうしようとしても少量すぎて産廃業者に相手にされないとの事情からも、家庭ごみとして処分されたことはまず間違いない。
可燃ごみとして排出されれば、ごみ収集車で粉々に破砕され、アスベストが飛散する。不燃ごみでも自治体によっては同様の対応をしている可能性がある。また最終処分場での埋め立ての際にも重機でつぶしてすき間をなくす「転圧」という作業により、やはりアスベストが飛散するはずだ。こうした作業にたずさわる労働者らがアスベストを吸わされた可能性がある。