ミャンマー国軍側がクーデター後まもない2月9日、複数の情報機関を統括する組織を設置していたことが、国軍側の文書から明らかになった。この組織は、国家保安局(略称NSB)で、2004年まで存在した国家情報局(略称NIB)に酷似している。ミャンマーは再び「軍事独裁体制の時代」へ戻ってしまうのか。(赤津陽治・アジアプレス)
◆廃止された国家情報局(NIB)に酷似
かつての国家情報局(NIB)は、軍情報部(略称MI)、警察情報部(略称SB)、特別捜査局(略称BSI)、警察犯罪捜査局(略称CID)など、各省庁にある情報機関すべてを統括する組織だった。政治活動家の弾圧や少数民族武装組織の分裂工作を行なうなど、恐怖政治の中核的な役割を果たした。その力の大きさから、当時の最高権力者タンシュエ議長に警戒されるようになり、2004年にMIトップのキンニュン元首相が粛清された際に解体された。SB、BSI、CIDは元の内務省下にそのまま温存されたものの、MIは幹部が一掃され、軍事保安局(略称MSA)として再編された。
◆新組織『国家保安局(NSB)』とは
今回明らかになったNSBは、国軍総司令官を長とし、国防大臣、外務大臣、連邦政府大臣、国境大臣、計画・財務・工業大臣、運輸・通信大臣、労働・入国管理・国勢大臣で構成され、内務大臣が書記、軍事保安局長が共同書記として加わる。
業務調整のために事務局が置かれ、各省庁機関の課長補佐級の代表者で組織される。事務局を構成する機関を見ると、かつてのNIB傘下にあった機関がすべて含まれている。軍事保安局(MSA)の部長級が事務局長を務め、国防省、内務省下のミャンマー警察、特別捜査局(BSI)、矯正局、警察犯罪捜査局(CID)、警察情報部(SB)、警察麻薬取締部、警察人身取引対策部、そして、外務省、連邦政府省、国境省、計画・財務・工業省、運輸・通信省、労働・入国管理・国勢省の代表者で構成される。
すべての情報機関を統括する組織の設置構想については、これまで繰り返し噂が流れたが、類似する組織が実際に設置されたのは、2004年のNIB廃止後初めてとみられる。