6月に食糧の市場価格が急騰して1カ月余り。北朝鮮各地で穀物価格が乱高下を繰り返し、依然として市場の混乱が続いている。業を煮やした当局は、販売業者に対し安値で売るよう強要し、従わない場合は商品没収という強硬措置を取り始めた。無理な価格統制に反発した業者は販売をやめているという。当局の強力統制も価格安定効果は薄いようだ。(カン・ジウォン/石丸次郎)
◆食糧暴騰の余波続く
6月中旬、北朝鮮各地で堰を切ったように食糧価格が高騰した。5月末に比べ、一時白米は1.7倍、トウモロコシは2.4倍に上昇、庶民の間で動揺が広がった。
食糧を購入できない「脆弱層」には飢える人が続出、栄養失調で出勤できない労働者まで出現するに及び、当局は6月末と7月中旬に、各地で5~7キロ程度のトウモロコシの無償配布を実施した。また地方政府が運営する「糧穀販売所」(食糧販売所)で、市場価格より少し安い値段で販売を始めると宣伝した。
市場価格は少し値下がりしたものの、依然として乱高下が続いている。以下は、アジアプレスが北部地域の数都市で調査した食糧価格の推移だ。(単位ウォン、1キロ当たりの価格。外貨レートも騰落激しく1米ドルは5000~6000ウォン程度)
〇白米
4200(5/28)→ 7000(6/15)→ 7500(6/22)→ 5600(7/16)→ 6200(7/20)
〇トウモロコシ
2200(5/28)→ 5300(6/15)→ 5500(6/22)→ 3200(7/16)→ 3400(7/20)
◆高値で売れば商品没収の強硬策
価格の抑制に躍起になった当局は、7月後半から販売価格の統制に乗り出した。高騰前の価格である白米4000~4500ウォン、トウモロコシ2200ウォン前後で販売するよう市場で監視しているもようだ。
統括するのは社会安全局(警察)だ。北部地域に住む協力者によれば
「警察は『商売人たちが金儲けに目がくらんで国家政策に混乱を与えている』として、高値販売はもちろん、市場以外での営業と、穀物買い溜めまで厳重処罰すると商人に通達した」とのことだ。
それでは、市場はどのような有り様なのだろうか? 両江道(リャンガンド)の強力者は次のように説明する。
「今、穀物が品薄な上、トンチュ(新興富裕層)たちが買占めに走っていて仕入れ競争がし烈だ。そのせいで値段が上がっているのに、高値で売るな、保管だけして売らないのはだめだと干渉して没収までしている。市場管理員らによる価格監視が厳しいので、商売人の大半は市場に出なくなり家で販売するようになった。ところが、取り締まり組織は商売人の家にまで押しかけている。家に米袋があるだけで追及される」