◆「息子を失った私のような思いをしてほしくない」
救急医療班のアスマ・ハジバクリさん(30)と一家は、ダマスカス南部のヤルムークに暮らしていた。地区が政府軍に包囲され、ドラム缶に爆薬と金属片を詰めた樽(たる)爆弾の攻撃で、6歳の息子が亡くなった。その後、実家があるイドリブに逃れた。
「子ども、女性、高齢者、罪のない人びとが殺されています。1人でも多くの命を救いたいと思い、隊員に志願しました」
政府軍やロシア軍の爆撃が市民を殺戮する一方、反体制派の攻撃で犠牲となる住民も出ている。内戦の悲しい現実のなかで、彼女たちはどれほどの不条理な死の現場を見つめてきたことか。
アスマさんは言う。
「市民を攻撃するアサド大統領に怒りを感じます。それでも、もし負傷した政府軍の兵士を見つけたら必ず助けます。どんな人でも息子を失った私のような思いをしてほしくない。その心が伝われば平和は訪れると信じています」
(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」2021年5月25日付記事に加筆したものです)
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