関西電力は8月2日、長野県や岐阜県の水力発電所更新工事で、労働安全衛生法(安衛法)により譲渡が禁止されているアスベスト(石綿)を含む設備を調査せずに鉄くずとして売却していたと発表した。15年以上不適正な状況が続いていたとみられるが、同社は調査するかどうかを明らかにしていない。(井部正之)
◆3年間で3件の違法売却か
同社が「不適切な取り扱い」があったとしているのは長野県の寝覚(ねざめ)発電所木曽川えん堤(同県木曽町)にある、ダムからの放水量を調節する「洪水吐ゲート」の設備更新工事。1月23日と3月31日、ゲート(開閉のための)巻上機4機のうち2機に使用されたブレーキライニング(摩擦材)に同法の基準(重量比0.1%)を超えるアスベストが使用されていたにもかかわらず、撤去した同設備とともに鉄くずとして産業廃棄物処理業者に売却していた。
6月28日に本店担当者が予算編成指針に記載されているアスベスト含有調査との文言に気づいて直近でゲート取り替え工事をしていた寝覚発電所の状況を確認したところ、分析しないまま撤去していたことが判明した。同30日には巻上機の製造業者からブレーキライニングにアスベストが含まれていると報告を受けた。
7月中旬に同型のゲート巻上機からブレーキライニングを採取して分析し、クリソタイル(白石綿)が38~44%含まれていたことから、前出の設備売却について安衛法第55条の譲渡禁止違反の可能性があると判断した。
同社によると、ブレーキライニングは半円筒状で巻上機1台に2個使用。木曽川えん堤で不適正に売却されたのは2機分で計約1050グラム。アスベスト含有量は439グラムだったという。
同社は2018~2020年度に巻上機を撤去した計152カ所の水力発電所について追加調査した結果、岐阜県の笠置発電所(恵那市)と丸山発電所(加茂郡八百津町)でもアスベストが含まれている同じ設備(各2機)を売却していたことが明らかになった。
譲渡先は複数あることを認めたが、それ以上の詳細は「差し控え」(同)と答えない。岐阜県によれば、同県内の発電所から撤去されたものは愛知県内の産廃業者に譲渡された。
関電は「金属ケースで覆われた状態で撤去・運搬・熔解しており、環境や健康への影響はない」との見解を示す。ただし、同社は産廃業者からそう説明を受けただけで、実際に熔解処理されたのか確認できていない。