◆イギリスより被害増えると推計

最盛期がイギリスに比べ、2倍超の期間におよぶうえ、その時期の輸入量も毎年5万トン程度多い。しかも日本特有の現象として、1970年代に一度使用が減り始めてから1980年代に再び増加に転じ1988年に約32万トンまで使用が伸びている。この第2ピークの存在により、使用量がさらに押し上げられている。原則禁止が2006年。全面禁止が2012年。

その結果、日本の中皮腫死亡者数は統計がとられ始めた1995年以降、増加傾向が続く。累計2万8213人で、いまのところイギリスの半数以下ではある。

だが、イギリスに比べ、アスベスト使用量の増加や使用禁止が15~20年遅いため、被害のピークもそれだけ遅くなるとみられる。また輸入量が1.7倍超、最盛期の期間が2倍超で、それだけ日本のほうがアスベストを吸った人が多く、その量や期間もより深刻となる。おまけに日本のほうが規制がはるかに緩いのだ。つまり、日本のほうが被害が多くなる可能性がある。なにしろアメリカに次ぐ世界第2位の「アスベスト消費大国」なのだ。

2002年に早稲田大学理工学部の村山武彦教授(当時)らは2000年から40年間で10万3000人が中皮腫で死亡すると推計した。イギリスよりも多くなる可能性があるということだ。村山教授(現・東京工業大学環境・社会理工学院)は現状について、「ほぼ当時の推計通り」と説明しており、今後の増加傾向も残念ながら続くとみられる。

しかも改修・解体時の規制は2020年の法改正でも十分改善されておらず、イギリスの「15~30年遅れ」である状況が変わっていない。今後さらに被害が長期化する可能性さえあるといわざるを得ない。

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