公園施設のひさし裏から危険性の高い吹き付けアスベスト(石綿)が新たに見つかった大阪府堺市に対し、被害者団体が対策の徹底や条例制定を求めて要望書を提出した。(井部正之)
◆堺市内の被害46%が原因不明
提出したのは被害者や家族らでつくる「アスベスト疾患・患者と家族の会堺対策チーム」。
要望のきっかけはJR堺市駅前の東雲公園拡張予定地として、市が2000年と2002年に購入した建物(長屋状で5軒のうち2軒)のひさし裏から、8月に新たに吹き付けアスベスト(アスベストとセメントなど結合材に水を加えて混合し吹き付け施工したもの)が発見されたこと。検出されたのは発がん性がより高いアモサイト(茶石綿)だった。
市はかねて吹き付けアスベストについて「すべて把握済み」としていたが、一目でわかる建物外部にあるにもかかわらず、見落とされていた。その結果、長期間にわたって把握されず、適切な管理がされていなかった。しかも発表資料に違法工事の可能性のある作業をさせたと記載する始末だった(後に虚偽発表と釈明)。
こうした問題を受け同対策チームは9月13日、市役所を訪問して要望書を提出。アスベストについて市の調査・管理方法を抜本的に見直すことや、新たに判明した現場の対策徹底、さらに今回の見落としをふまえて再発防止を確実とするため対策条例の制定などを求めた。
同対策チームの一員で堺市民の古川和子さんは、「アスベスト被害の救済制度で認定を受けた人のうち原因が特定できない人が堺市は46%、約半分です。こういったよくわからない場所での曝露が積み重なっていくとそういうことになるんです。いま病気になっている方は数十年前の曝露で病気になっている。(市施設が適切に管理されないと)数十年後に病気になるリスクを負わせてしまうことになる」と指摘した。
堺市では2016年6月に市施設の改修で高濃度にアスベストを含む煙突を法令で定められた対策なしに解体。隣接する保育園の園児らの曝露が問題になった。また大阪府警が市や職員を大気汚染防止法(大防法)違反の疑いで書類送検した(後に不起訴処分)。この問題を教訓に市は市長をトップとするアスベスト対策推進本部を立ち上げ、再発防止を誓ったはずだった。