アスベスト(石綿)に曝露して中皮腫などを発症した被害者に対する救済制度の抜本改正を求め、10月7日オンラインで集会が開催された。そこで指摘されたのは希少がん治療の現実や救済の格差が拡がる現状だ。(井部正之)
◆希少がん治療薬少ない理由とは?
患者や家族らでつくる「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」が主催したもので、国会議員や被害者、家族ら約80人が参加した。
集会ではまず2人の医師がアスベストを吸うことで発症する希少がんで、予後が悪いことで知られる中皮腫(肺や心臓などの膜にできるがん)の治療について講演した。国立がん研究センター中央病院の後藤悌医師は「希少がんの治療成績はほかのがんより悪い」とデータを示し、治療の選択肢が少ないことをその理由に挙げる。治療薬が「中皮腫は4つあるだけほかの希少がんに比べても多いほう」というのが希少がん治療の実状という。
後藤医師は中皮腫など希少がんの抗がん剤治療薬の種類が少ないことについて、「(肺がんなどに比べ)患者が少ないので製薬会社にとって投資に見合わないため世界的に研究が進まない」と説明する。一方で医師主導の進めるにも「承認申請用の臨床試験に数億円掛かる」など実施が困難という。
兵庫医科大学付属病院の長谷川誠紀医師は、「中皮腫治療薬の使用条件が限定されている。(治療薬の1つ)ニボルマブは最初に抗がん剤を使う人しか使えない。手術前・手術後の補助にも使えない。再発しないと使えない」と指摘。続けて「効きそうなのに使わせてもらえない。限定条件を撤廃して、みんなが使えるようにしていただきたい」と訴えた。
その後登壇した中皮腫患者で「家族の会」の右田孝雄さんは、「中皮腫で毎年1500人が亡くなっています。1日4人の計算です。(肺がんなどを含めると)アスベスト関連の患者さんはもっと亡くなっていることになります」と現状を話す。
現在の石綿健康被害救済法による救済制度では、申請時に亡くなっている場合、葬祭料と救済給付調整金で計約300万円の支給である。生存の場合、療養手当として約10万円(月額)のみ。認定後に死亡した場合、療養手当分が減額され、葬祭料約20万円しか支払われないこともある。