大阪府堺市でまたもアスベスト(石綿)の不適正工事が起きた可能性がある。同市では6月に小学校4校で天井裏から新たに吹き付けアスベストを発見。うち2校で補修工事を実施した。ところがその作業に法違反の疑いや子どもたちの曝露を拡大したおそれがあるのだ。(井部正之)
◆アスベスト対策「不要」と市主張
市は9月27日、市内の日置荘小学校、登美丘西小学校、八田荘小学校、福泉小学校の4校で体育館3階にある教室の天井裏から吹き付けアスベストが見つかったと発表した。
市教育委員会は7月1日に4校のアスベスト検出を把握した。八田荘小学校で廊下の天井板3枚(90cm角)の一部(約30cm×270cm)が破損、日置荘小学校では点検口のふた(45cm角)が欠損しており、いずれも天井裏からアスベストの飛散が懸念される状況が少なくとも2015年ないし2016年から続いていた。実際には「それ以前から(天井の一部が)なかった可能性がある」(学校施設課)という。
発表によれば、同9日と16日に補修した。それまで長期間放置していながら、吹き付けアスベスト発見から約半月で対応しているところに市のあわてぶりがうかがえる。そうした混乱が原因なのか、市はこの2つの工事でアスベスト対策を講じていなかった。
今年4月に改正された大気汚染防止法(大防法)や労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)では、天井裏に吹き付けアスベストが使用されている場所に成形板を入れて飛散を抑える「囲い込み」工事について、除去と同様に現場を密閉に近い状態に隔離養生したうえで、内部を減圧しつつ高性能フィルターでアスベストを取り除く装置を使用(負圧除じん)することなどを義務づけている。
今回の2件の工事はいずれも天井裏の吹き付けアスベストからの飛散を抑えるためのもので、規模は小さいものの囲い込み工事といってよい。その場合には上記の対策が必要となるが、市教育委員会学校施設課はそうしたアスベスト対策を「行っていない」と認めた。だが、「(法的)義務ではないことを労基や環境局に確認している」と主張するのだ。