大阪府堺市は10月19日、市内の小学校で児童らが日常的に発がん性の高いアスベスト(石綿)に曝露していた可能性がある問題を受けて、外部有識者による健康リスク検証の懇談会を設置する方針を公表した。ところが行政対応の第三者検証は拒否した。(井部正之)
◆11月に有識者の懇談会発足
永藤英機市長が同日の記者会見で筆者の質問に対して明らかにしたもの。
市教育委員会は7月1日に市内の日置荘小学校、登美丘西小学校、八田荘小学校、福泉小学校の4校で体育館3階にある教室の天井裏のはりに耐火材として、吹き付けアスベストが使用されていることを把握した。吹き付けアスベストは非常に飛散しやすく、危険性がもっとも高い。実際に吹き付けアスベストが施工された部屋で働いていた、アスベストをまったく扱ったことのない業種で100人超が中皮腫(肺や心臓などの膜にできるがん)などを発症して労災認定を受けているほどだ。
とくに問題なのは、八田荘小学校で廊下の天井板3枚(90センチメートル角)の一部(約30センチメートル×270センチメートル)が破損、日置荘小学校では点検口のふた(45センチメートル角)が欠損し、天井裏からアスベストの飛散が懸念される状況が少なくとも2015年ないし2016年から続いていたこと。実際には「それ以前から(天井の一部が)なかった可能性がある」(学校施設課)。日置荘小学校ではその教室が学童保育のようなかたちで利用され、児童らが日常的にアスベストに曝露していたおそれがある。
市は9月に教室内の空気を測定した結果から「安全」と強調する。永藤市長も会見で「多大なリスクが発生したとは考えておりません」と主張した。市はドアや窓を閉め切って誰も入らない状態で測定しており、実際に児童らが利用している状況と大きく異なることから適切なデータではないと専門家は指摘している。
市は11月に医学やリスク評価についての外部有識者4~5人による懇話会を立ち上げ、健康リスクの検証を開始する。永藤市長は「できれば年度内に何らかの発信をしたい」としている。
低濃度のアスベスト曝露のリスク評価について知見のある経験豊かな専門家を入れるのかと尋ねたところ、「検証する上ではうわべだけでは意味がありませんので、しっかりとその点確認できる方にお願いしたい」との回答が得られた。委員構成が適切であることを願いたい。