◆抜本改正への各政党の見解は?

こうした状況をふまえ家族の会は、(1)救済制度の抜本改正、(2)救済制度の性格は変えず給付の拡充、(3)労災より厳しい判定基準の適正化、(4)石綿健康被害救済基金の使途を治療研究にも拡大、(5)時効救済で請求権がなくなるなど救済制度のすき間解消──の5項目について各党に対し「見直しの必要あり」「見直しの必要なし」「回答なし」から選ぶとともに、その理由についても尋ねた。

与党は自民がすべて「回答なし」だったのに対し、公明は(1)で「回答なし」だった以外すべて「見直しの必要なし」とより厳しい。両党で「回答なし」だった(1)の救済制度の抜本改正は、自民が「個別的因果関係を問わないことにより迅速な救済が図られていることから救済制度の基本的考え方を変える状況にあるとは考えておりません」、公明が「補償制度とすると因果関係の特定が困難な中で賠償責任を確定する必要性が生じ、結果として迅速な救済が図れない。引き続き適切に救済給付を行っていくことが重要」などといずれも否定的だ。

両党の返答は制度変更に肯定的な内容は1つもなく、いずれも国の公式見解が繰り返され、改正不要としている。

一方、野党4党は(1)について、すべて「見直しの必要あり」と回答。立民は「アスベスト被害者の属性により救済内容に格差が生じないすき間のない救済を実現すべき」。共産は5月の建設アスベスト訴訟の最高裁判決に言及しつつ、「救済制度は支給内容もきわめて不十分であることなどから抜本的見直しが必要」とした。国民は「すき間のない救済を実現するため、縦割り行政を排し、情報公開、情報開示の促進、患者・家族をはじめとする関係者の参加を確保しながら、アスベスト対策を総合的に推進します」と踏み込んだ回答だ。N裁は「制度自体が現在進行形。救済し得ない被害者が存在する以上は積極的に見直しを検討していくべき」とする。

野党はほとんど「見直しの必要あり」と回答。立民は(4)、国民は(4)と(5)で「回答なし」だったが、いずれも内容的には賛意を示す。

とくに国民は「環境健康被害の回復・軽減策及び被害防止対策の迅速な実施を図るため、『環境健康被害者等救済基本法』を制定します」と返答。アスベスト以外の被害者も含めた制度の制定を表明し、認定基準の緩和や行政からの独立性を高めた環境健康被害等基準策定等委員会の設置、救済給付制度(医療費、療養費、交通費等)の整備などを含めた概要を示すなど際立っていた。

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