◆有権者にとって選挙時の判断材料
菅前総理が宗教関連団体に支出した領収証。情報公開請求で開示された。
今回の調査で明らかになったのは、菅氏、もしくは秘書の日ごろの政治活動だ。つまり菅氏がどのような業界と懇意にしているのかが見えてくるのだ。
領収書を分析すると、菅氏は業界団体だけでなく、宗教関係や自衛隊の関係団体にも支出していることが分かった。
支出は、地元横浜の業界団体をはじめとする団体が多くて、計43件32万3000円。神社をはじめ、PL教、生長の家などの宗教関係団体に対して27件17万0000円。隊友会などの自衛隊関係団体に13件7万2000円などだ。
2019年、菅氏は官房長官を務めていたので、本人が会合に出席したものは少ないだろうが、地元の秘書などがどのような活動をしていたか知るのに、少額領収書は非常に貴重な資料になる。また、一万円以下の支出であっても、例えば8000円の飲食代は庶民にとっては高額な食事だ。そうしたものでさえ、現行の制度では支出の明細を記載しなくてもよいことになっている。これらの支出や政治資金の透明化について菅義偉事務所に質問したが、期限内に回答はなかった。
◆「各会派各党間で議論すべき」が総務省の立場
現行の法制度に問題について総務省政治資金課に聞いてみたところ次のような回答を得た。
「少額領収書を、1円以上を公開するような検討をしたことはありません、少額領収書については、制度の内容についてはお答えしますが、制度の在り方については政治活動の自由があり各党の政治活動の在り方と非常に密接に関係しておりますので、各党各会派で議論して頂くべきと考えています」
やはり政治資金は不透明な部分が多い。上脇教授は次のような見解を述べた。
「国会議員関係政治団体について少額領収書の写しの開示制度が導入されたのは、国会議員は主権者国民の代表者であって、他の政治団体以上に透明性が確保され、有権者の投票の判断材料にされるべきだからです。税金が原資の政党交付金を受け取っている政治団体もあるので、なおさらのこと透明性が求められます。ただ、その制度を使って支出の明細を調べるには、時間と費用が掛かってしまうという問題があります。収支報告書に支出の明細を記載する基準を、今の1万円超から例えば5000円以上に引き下げるだけでも透明性は高くなるので、法律改正の必要があるでしょう」
「政治とカネ」の不祥事が相次いでいる割に、再発防止に関する議論は低調だ。法改正や制度の見直し議論が国会で活発にならないのであれば、有権者がそうした声を上げていかなければならないだろう。
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