◆反対派排除でオルテガ氏が5選
11月7日、中米ニカラグアで行われた大統領選挙は、約76%の得票によりダニエル・オルテガ氏が4期連続、5回目の当選を果たした。今回の選挙を前に、政府は3つの野党から政党資格を剥奪し、7人の野党大統領候補を含む30人以上の反体制派有力者を逮捕。選挙は公正性を著しく欠く中で行われたものだった。欧米各国は現政権の独裁性を厳しく非難し、選挙結果を否定している。
◆メディアへの弾圧
政党、政治家だけでなくメディアへの弾圧も激化した。顔と名前,
年齢を明かさないことを条件に、全国紙の元記者がインタビューに答えてくれた。名前は仮にオスカル氏とする。
彼が記者をしていた全国紙は、全国的な反政府抗議運動があった2018年、運動側に立ち、それを武力弾圧する政府を批判したことから、同年、輸入に頼っていた新聞印刷に必要な紙とインクを税関で差し止められた。以後、国内で確保可能な材料と在庫分で、大幅に紙面を縮小し発行を続けていた。それも長引く差し止めと、記者への脅迫が激しくなり、同年9月に廃刊に追い込まれた。
「私たちは政府を批判する記事を書くことができなくなった。命の危険を感じ、国外に亡命した仲間も多い」とオスカル氏は話す。
また95年の歴史を持つ日刊紙「ラ・プレンサ(La Prensa)」も同様の過程をたどり、今年8月に紙での新聞発行を断念。現在はウェブのみでの運営となっている。
オスカル氏はその後、人権活動を主とする国内の非政府組織に勤務するが、ここも政府の妨害を受け資金難に陥り、再び職を失った。
昨年制定された複数の法令により、ニカラグアでは国外から支援を受ける団体が、政府の意にそぐわない活動することが事実上、禁止された。また、市民の抗議活動を煽っていると政府に認定された場合は国家転覆罪が、政権に対する国際社会の制裁を呼び込む活動を行っていると認定された場合は国家反逆罪が、それぞれ適用されることになった。これらの法令を根拠に、政府と対立する政治指導者が逮捕され、多数の組織が法人格を剥奪されて閉鎖に追い込まれた。
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