◆将校家族の配給まで滞る

「今年8月まで12軍団所属の将校本人には配給が出ていたが、家族分は出たり出なかったりだった。9月からはさらに厳しくなって将校の家族たちはとても辛そうにしていた。国産の醤油、大豆油は少しずつ配給があったそうだが、肝心の食糧配給が滞り、妻が子供を連れて実家に帰り、将校一人が残るケースが多いということだった」

将校の妻や家族は、軍紀上商売を禁じられている。さらに昨年から、コロナ防疫のために家族が市場に行くのも厳しく制限されている。民間人と接触させないためだ。副業もできない将校家族の暮しは厳しい。

「話を聞いたある部隊の参謀の妻は、暮らせなくなって実家のある咸鏡南道(ハムギョンナムド)戻ろうとしたのだが、移動のための旅行証明書をなかなか出してくれず、ずっと待機中だ。上部では『将校と家族には絶対に配給を維持せよ』と言っているそうだが、実情とはかけ離れた話だ」

◆軍にも自給自足促す

北朝鮮の軍部隊の多くは「副業地」と呼ばれる農地を耕作している。副食物確保のためだ。豆やトウモロコシ、キムチ用の大根、白菜などを栽培する。ところが、今秋は軍糧米の確保が困難なになったため、軍にも「できる限りの自給自足」が指示され、「副業地」で生産した収穫物のうち、野菜以外の穀物の生産高をすべて上部に報告し、これを軍糧米から差し引くことになったという。来年も改善の見通しが立たないからだ。

9月中旬に収穫期に入った後、各地の農場で兵士集団による盗みや、畑や倉庫の襲撃行為が相次ぎ、大きな社会問題になっていた。将校家族まで困窮するようになった今、「軍隊を食わせる問題」が金正恩政権にとって喫緊の課題となっている。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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