◆当局は「革命のために子供を生め」
このような風潮の拡散は当局を焦らせている。少子化が深刻だからだ。北朝鮮政権は人口関連の統計を一切発表していないので実態は不明だが、米国の中央情報局(CIA)は、今年7月時点の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの推定数)は1.91で、既に高齢社会に入っていると推定している。
金正恩政権は、労働党傘下の女性組織である朝鮮社会主義女性同盟(女性同盟)を通じて、未婚はだめだ、結婚せよというプレッシャーを加え続けている。
――権力機関が個人の結婚問題に介入するのですか?
「30歳を過ぎた女性は、所属組織が青年同盟(社会主義愛国青年同盟)から女性同盟に変更になります。女性同盟は既婚女性の組織だったのに、今では未婚女性が続々入って来るわけです。上から未婚女性をちゃんと管理して結婚させよと指示があるので、会議や講演の度に『母親としての役割をしっかり果たせるよう結婚忌避現象をなくし、朝鮮革命の車輪の片方を担っているという心情で、革命の助けになければならない』 というのです。さらに女性同盟の委員長は、『金儲けに目がくらんで結婚を避けている女性が多いが、これは正しいことではない。たとえ一人で金を稼いで豊かに暮らしても国の役に立つことではない』と講演で言っていました。要するに、結婚して子供をたくさん産めということ」
――北朝鮮でも結婚登録をしない事実婚はありますか?
「増えていますよ。朝鮮ではとにかく離婚が大変だから。結婚登録せずに長く暮らす人が少なくありません。ところが政府は、結婚せずに同棲するのは『非社会主義行為』だと批判します。人民班を通じて調査をして呼び出されて、無理に結婚登録をさせようとしています。同居を解消して密かに会っていると、それも取り締まるので大変です。
――「非社会主義」だという批判は行き過ぎですね。
結婚せずに交際だけして、相手から援助を受けている人もたまにいます。当局はそれを「妾行為だから『非社会主義』だ。事実婚は許されない」と取り締まるわけです。それでも、結婚しないという若い女性たちをどうしようというのでしょう」 (了)
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。