◆20年におよんだ「テロとの戦い」で
2001年の米国同時多発攻撃で、アメリカは、アフガニスタンのタリバン政権が事件の首謀者ビンラディンをかくまっているとして戦争を開始。この「テロとの戦い」は、イラク戦争へと拡大する。
住民を巻き添えにする米軍に、イラク人の怒りは高まった。
「市民を殺すことが正義の戦いなのか」
結局、戦争の理由とした大量破壊兵器は出てこなかった。フセイン政権崩壊後の混乱のなかで、イスラム過激組織各派が台頭し、イラクはスンニ派・シーア派の宗派抗争の泥沼に至る。その後、ISが勢力を拡大し広範な地域を支配、世界各地でのテロを扇動した。
そして今、アフガニスタンでは米軍撤収とともにタリバンがほぼ全土を制圧し、政権が復活した。イラクではシーア派政党が勢力基盤を固め、隣国イランの影響力がさらに高まっている。
◆多数の犠牲生んだ戦争
アメリカ史上最長の戦争となった「テロとの戦い」。抑圧や独裁政権から解放された住民もいた一方、米軍の空爆や誤射だけでなく、揺れた政策の結果、苦難に直面した人も多い。見えないゴールのために多額の戦費が投じられた。
失われたのは米兵の命だけではない。その何十倍もの市民が犠牲となった。被害に対する責任も補償もあいまいなままだ。
現在も故郷に戻れず、避難生活を送るジハンさんは言った。
「私たちはアメリカの都合で翻弄され、見捨てられた」
果たして、これはアフガニスタンやシリアだけのことだろうか。20年におよんだ戦争は何だったのか。それを支持した国にも向けられる問いだ。
(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」2021年10月27日付記事に加筆したものです)
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