◆指導無視し不適正施工
鉄骨のはりなどに耐火材などとして使用される吹き付けアスベストはもっとも危険性が高い。非常に飛散しやすく、適切に除去せず解体したり不適正な除去をすれば外部に漏えいし、周辺にいる人びとに吸わせてしまう。
そのため大気汚染防止法(大防法)や労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)で飛散防止の措置が定められている。吹き付けアスベストなどの除去では作業計画を自治体に2週間前に届け出たうえで、まず現場をプラスチックシートで隔離(隔離養生)。作業場内を減圧しつつ高性能(HEPA)フィルターでアスベストを除去し、清浄な空気だけを外部に排気する装置(負圧除じん装置)を設置する。作業員は防護服や防じんマスクをフル装備して除去する。ざっくりいえば、ビニール袋の中でアスベストを強力な掃除機で吸って外部に漏らさないようにしながら除去するようなものだ(内側につぶれないよう空気を入れつつ行う)。
ところが同課によれば、「再三指導しても届け出が出てこなかったので、現地を見に行って直接指導しようとしたところ、すでに除去されていた」という。
区の担当者が6月21日に現場を訪れたところ、4階建ての建物が半ば以上解体されていた。鉄骨に一部吹き付けアスベストが残存したままの不適正施工である。飛散のおそれがあるため、区は池袋労働基準監督署とともに作業の一時停止に加え、改めて届け出のうえで適正に除去するよう指導した。
解体を請け負っていたのは好栄工業(東京都葛飾区東堀切)。
同社の報告によれば、6月7日から8日に現場を養生し、9日から14日までの6日間で吹き付けアスベストを除去。続く15日から17日に建物を一部解体し、18日に除去したアスベストを含む廃棄物を搬出していた。区が立ち入り検査で訪れたのはその後のため実態は不明だ。
同社のウェブサイトを確認すると、「豊島区の某現場にて、アスベスト処理工事を行いました」とブログで報告し、別のページで除去中の写真も公表していた。ところが、その施工が滅茶苦茶なのだ。
老舗の優良アスベスト除去業者に見てもらったところ、あまりのずさんさに「目を疑った」と驚きながらこう語る。