◆アスベスト飛散「公表なし」の現実

11月5日、埼玉県川口市は協信(川口市西新井宿)が特別管理産業廃棄物に該当する「廃石綿等」を許可を持たずに巣鴨の現場から自社の事業地まで運んで保管した廃棄物処理法(廃掃法)違反で11月16日から12月15日まで事業停止を命じた。

廃棄物を押しつけられた産廃業者だけが許認可制度の存在により、行政処分されている状況だ。再三の指導を無視してあえて不適正施工した悪質な“主犯”が指導だけで社名の公表すらされていないことに不公平感が強い。

好栄工業は同社ウェブサイトに不適正作業の証拠写真を掲載し、ブログで「もし、アスベスト処理工事が必要な方はまずは現調させていただきますので、お気軽にご連絡ください」と営業まで展開していた。筆者の問い合わせ後写真は削除されたが、ブログの営業トークは12月6日現在もそのまま掲載されている。前出の除去業者は「ああいう連中はまたやりますよ」と警告する。

別の老舗除去業者は「アスベストを街中で飛散させる不適正工事は、遅効性だから影響がすぐ出ないだけで毒をばらまく無差別テロといっしょです。吸わされた人は何十年か経って中皮腫などを発症するかもしれない。それなのに逮捕もされない。罰則も甘すぎるし、適用もされないんじゃ抑止効果なんてないですよ」と何度も筆者に語っている。

安衛法や大防法違反で仮に罰則適用されたとしても最大で6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金でしかないうえ、まず送検・起訴もされないのが現実だ。改めてアスベスト除去においても許認可制や罰則の大幅強化が必要であることを痛感させられる。

今回の“事件”でも現場周辺でアスベストを「吸わされた」人たちがいるはずだが、事実関係の公表すらされておらず、まったく住民に知らされていない。最大の被害者は知らされもせず、危険な発がん物質にさらされる住民である。

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