北朝鮮の北部地域一帯で、11月中旬から「住民線」と呼ばれる民生用の電力供給が好転していることが分かった。
11月末に国内各地に住む取材協力者が一日の供給時間を調査したところ、平安北道(ピョンアンプクド)の新義州(シニジュ)市で夜間に10時間程度、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市でも夜間に10時間程度、咸鏡北道(ハムギョンプクド)の茂山(ムサン)郡では、やはり夜間に5時間程度の電気供給があった。
北朝鮮では、生産施設と党や行政機関、協同農場向けの電力を「工業線」と呼ぶ。茂山には北朝鮮随一の鉄鉱山があるが、「『工業線』は18時間以上来ている」とのことだった。
◆農場に電気を集中せよ
今年は例年以上に電力事情が悪かった。新型コロナウイルスの流入遮断のため中国との国境を封鎖して貿易を極度に制限したことが原因だ。発電・送電の設備が故障しても機械や部品を中国から輸入することができず、発電所の稼働率が落ち込んだのだ。
8月には、地方の中心都市でも「住民線」は一日に1~3時間程度しか供給されなかった。生産量の落ちた電力を「工業線」に優先的に回していたためだ。
さて、11月中旬から突然電力事情が好転した理由は何なのか? 咸鏡北道の協力者は、「9月に入って協同農場の収穫と脱穀作業に電気を集中させていたが、それが終わったからだ」という。発電・送電設備の機械と部品が中国から輸入されたのかどうかは不明だ。
12月後半には河川が凍結し始め、水力発電所の稼働が止まる。これから3月後半まで、北朝鮮は電力事情がもっとも悪くなる。(カン・ジウォン)