◆法治国家で考えられない異常
上脇教授は次のように話す。
「そもそも法務省は、検察官には国家公務員法の勤務延長の規定は適用されないと解釈・運用してきたので、黒川検事長について国家公務員法の勤務延長の規定を適用して勤務延長するためには、法律を改正するか、または従来の解釈を変更するしかありません。法律改正がなされていないのは明らかですから、解釈を変更したはずです。
そうであれば、法務省内部でも、協議して決済を経ることになります。公文書管理法のほか、法務省が自ら定めた行政文書管理規則や行政文書取扱規則は、意思形成過程を明らかにする文書を作成するよう義務づけているので、当然、私が請求した文書も作成されているはずです。ですから不開示決定を取消す訴訟を提起したのです。
もっとも、安倍政権の守護神と言われた黒川検事長のために法律の解釈を変更することは官僚の世界でもあまりにも非常識ですから、故意に文書を作成しなかったのが真実かもしれません。そこで、予備的に国家賠償も請求したのです。この度の第二次訴訟では、上記のいずれであれ、法治国家では考えられない極めて異常なことが安倍政権下で行われたことを明らかにするために提訴したのです」
安倍政権では、これまで培ってきた法解釈を変えたり、公文書を改ざんしたりすることが幾度も行われてきた。その一つである森友問題では、裁判が途中で打ち切られ事実解明されることなく終わるということが岸田内閣で行われた。黒川検事長の定年延長も安倍政治の負の遺産であり、真相解明のためにも法務省は速やかに公文書を開示すべきだろう。
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。
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