◆即決で6人に無期懲役

衝撃的だったのは、中学生を教室で手錠をかけて連行したことだけでではない。逮捕から間もなくして重刑に処されたことだ。別の協力者は次のように伝えてきた。

「学校内から連行された生徒の他、数分を観ただけの中学生や大人も逮捕された。当局の説明によれば逮捕された22人のうち6人が無期懲役になった。『一場面でも観た者は全員逮捕せよというのが取り締まりの方針』なのだそうだ」

重刑を受けたのが中学生なのかははっきりしない。北朝鮮でも中学生の犯罪は「少年教養所」(少年院)送致が原則なので、映画の流布や販売に関係した成人に重刑が下された可能性が高いのではないか。

重刑は「反動思想文化排撃法」が適用されたものだろう。「南朝鮮の映画、動画、図書、歌、絵、写真などを直接観たり保管したりした者は5年以上15年以下の懲役刑、流入・流布させた者は無期懲役または死刑」と条文にある。制定と施行は2020年12月だ。

「いったい外部の情報がどれだけ怖くてこんな酷い取り締まりをするのだろうか。人民の眼と耳を塞げば統治が楽になると考えているのだろう。観たという映画(巨大サメの作品)は政治的には何の問題もないのに、なぜ厳しく取り締まるのかという声が多い」

衝撃的な事件について、協力者の一人はこのようにコメントした。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

※訂正します。
中学生が教室から連行された事件を2020年11月としていましたが、2021年11月の誤りでした。訂正いたします。

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