大阪府・市が大阪湾の人工島「夢洲(ゆめしま)」への誘致を目指すカジノを中核とする統合型リゾート施設(IR)。昨年12月に公表された区域整備計画案が2月10日に開会する市議会、24日開会の府議会で同意を得れば、4月にも国に申請する。夢洲は「2025大阪・関西万博」会場としても整備が進む。相乗の経済効果に期待が集まる一方、公費負担が膨らむ恐れがあり、防災や環境、治安などのリスクも抱える。大阪は、このままカジノ計画を猛進していくのか。(新聞うずみ火 栗原佳子)
◆24時間365日、年間7兆円もの賭博…「カジノあかん」の声
2021年1月半ば、大阪市民ら十数人がJR環状線京橋駅前でカジノ誘致計画中止と撤回を求める街頭での署名活動を行った。帰宅ラッシュの時間帯。行き交う乗降客に署名の協力を呼びかけている。
「カジノあかん」の断幕を背に阪南大教授の桜田照雄さん(63)がマイクを握った。カジノ問題の専門家で、「カジノ問題を考える大阪ネットワーク」代表である。
「夢洲のカジノのスロットマシンは6400台。大阪最大のパチンコ店の5倍ものゲーム機を並べ、24時間365日、年間7兆円もの賭博をさせようとしています。入場者は年間2000万人を見込んでいますが、その7割が国内です。
当初もくろんでいたインバウンドの富裕層の誘客はおぼつかず、国内の客をターゲットにしているのです。賭博には依存症がつきもの。カジノに通った100人のうち1人か2人は必ずギャンブル依存症になっています。松井市長や吉村知事はいろいろなことをごまかして賭博場を開こうとしているのです」
2021年12月21日、府・市は国に提出する区域整備計画案を公表した。事業者に決まった米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスとの共同で策定した最終案だ。
IRとはカジノ、国際会議場、娯楽施設、商業施設、ホテルなどの複合施設だが、儲けの見込みの大部分はカジノである。府・市の計画案でも年間売上5200億円のうち8割がカジノからと算盤をはじく。
「初期投資額は1兆800億円。このうち5400億円は三井住友銀行と三菱UFJ銀行からの融資です。両行とも『ギャンブル産業には金を貸さない』という国際的な約束に署名しています。これは二枚舌ではないですか」
しかも、夢洲IRの事業期間は35年。継続を前提として30年の延長契約を結ぶことができる。一度カジノができれば65年間、実害を被る可能性がある。自治体側が契約解除を決めると、多額の損害賠償リスクも発生しかねないという。
◆松井市長「一切税金使わない」と言っていた
「松井市長は知事時代の16年、『IRカジノには一切税金は使わない』と発言しました。それなのに『汚染土壌が出てきたので790億円を払います』と言い出しました。夢洲は産業廃棄物や焼却材だけで1000トンも埋まっています。汚染土壌があることは百も承知のことなのに、松井市長は『私は知らなかった』と平気で言っています。
もともと夢洲は工場地帯だから汚染土があっても買ってもらえるという設定で調整してきました。ところが、万博やカジノを呼びたいと、商業地に変更したので、汚染土壌の対策費を負担しなければならなくなったのです」