「玉音放送」を聴く人々(『Japan's Longest Day』1968)

◆敗戦ショックの中で

敗戦という極限状況の中でもまた、加虐のトラウマは再来する。

敗戦という現実は、植民地の支配民族という特権的地位から日本人を引き下ろしたばかりでなく、蔑視の対象である被支配民族が自由を回復するということは旧支配層にとって最も危険な事態であった。

「私たち日本人は敗戦を悲しみ、茫然としていた。ところがあちこちの朝鮮人が住んでいる家からは、夜を徹して酒を飲み、歌いおどっている、にぎやかな声が聞こえてきた。「朝鮮人は何をしてるんや」と聞いた私に、父は「朝鮮人は勝ったんや」と答えた。日本人にとっての敗戦は、朝鮮人にとっては勝利であり、解放だったのである」

(三輪泰史『占領下の大阪』)

(敬称略 続く 16

劉 永昇(りゅう・えいしょう)
「風媒社」編集長。雑誌『追伸』同人。1963年、名古屋市生まれの在日コリアン3世。早稲田大学卒。雑誌編集者、フリー編集者を経て95年に同社へ。98年より現職。著作に『日本を滅ぼす原発大災害』(共著)など。

 

★新着記事