◆竜頭蛇尾が常、量産は可能か
つまり、北朝鮮では兵器の実戦配備はなかなか計画通りには進まず、遅延を繰り返して最終的には配備縮小となって、相当数のダミーを配置するということが茶飯事なのである。
北朝鮮では、多くの事業は持続性に欠け、完了がうやむやなままのスッキリしない慣性を持つ。その過程で首領の逆鱗に触れてしまった場合、担当した幹部は運が悪いのだと、何の感傷も無しに職場の部下たちがひそひそ話するのを見たことがある。
気性の激しい金正恩の時代に入ってからは、逆鱗に触れる確率が高い高位幹部に抜擢されるのを避ける傾向が高まっているのではないか。
あらゆる製品が、開発から市販されるまで時間がかかるのは世の常識であるが、北朝鮮の兵器が本格的な脅威になるまでにはまだ時間があると甘く見ていると、大やけどを負ってしまうだろう。
現在の北朝鮮の問題は事態を甘く見てきた米国の責任が大きい。スピードが過去に比べとてとてつもなく速くなった北朝鮮の兵器開発だが、「矛と盾」の開発競争だけでその脅威を抑制できるのか、戦略を根本的に見直す必要がある。
1月20日に開かれた労働党政治局会議で金総書記は、対米信頼措置を「全面再考」するとして、核とICBM 実験再開の検討を示唆した。モラトリアムの解除を公式に表明したことで韓国のマスコミでは大騒ぎである。いったい金正恩政権はどこまで行くつもりなのだろう。(了)
呉小元(仮名 オ・ソウォン)
60代の男性。元朝鮮労働党傘下機関幹部。日本で生まれ10代で帰国事業で北朝鮮に渡った。平壌の大学を卒業後、労働党傘下の貿易会社で働いた後、韓国に対する工作活動をしていた。1990年代に韓国に亡命。会社員を経て定年退職。著書に「ハダカの北朝鮮」(新潮社)、コラム「平壌ウォッチ」を東京新聞に連載(2010~2012)、月刊誌「新潮45」、「ファクタ」、情報サイト「フォーサイト」等に多数寄稿。
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