◆再調査で分析不一致の検証なし
しかし市が実施させた再調査には疑問が残る部分も少なくない。
入札前の予備調査と同社の事前調査における分析で同じ建材についてアスベストの有無が異なっていれば、改めてひょうご環境創造協会が分析したとしても2択である以上、結果がそのどちらかになることは最初からわかっていたはずだ。
だからこそ再調査では、その分析が適切であることはもちろんだが、アスベストが有無どちらになるにしても分析結果が正しいことを裏付けるためにそれまでの2機関が分析した試料の残りや採取箇所の周辺をさらに何カ所も採取して徹底的に調べるなどの検証作業が必要になる。
まして今回は予備調査と事前調査で2機関が仕上塗材の下地調整材(下地を平らにするのに使うセメント系などの材料)から国際標準の定性分析法「JIS A 1481-1」と日本独特の簡易的な定性分析法「JIS A 1481-2」でアスベストを検出していた(たとえばA棟2階の階段内壁A棟2階の階段内壁)。これに対し、同協会では「JIS A 1481-1」で不検出としているのだが、単に分析結果を提出しているだけで検証的な報告はない。これでは再調査の意味がない。
なぜそんなことになっているのだろうか。情報公開でその一端が見えてきた。
筆者が市に今回のアスベスト調査・分析費用について情報公開請求をしたところ、元請けの春名建設に対して市が設計変更して支払ったのは約1846万円だったと開示された。市住宅建設課によれば、そのほとんどがアスベスト調査・分析の費用という。
その使途として、春名建設の事前調査を請け負った1社と再調査のひょうご環境創造協会に対して支払われた費用の項目などが開示された。各項目の単価や金額は非開示だが、「アスベスト含有建材事前調査」として「定性分析 214検体」「定量分析 52検体」というのが委託内容だ。これはアスベストの有無を調べる定性分析とその含有率を調べる定量分析として委託された検体数で、つまりは通常の1検体いくらの分析委託だったことがわかる。当初の2機関による調査・分析を「検証」するための委託は記載がなかった。
情報公開での開示結果をふまえ、市住宅建設課に同協会への委託内容を改めて尋ねると「試料採取と分析」で、それまでの調査・分析の検証は「入ってない。そもそもそういう趣旨でやったわけではない」と認めた。