◆問われる検証なき再調査
では再調査はなぜ実施されたのか。
「当時電気室すら調べないような業者の事前調査が信用できるかと指摘を受けており、アスベストの見落としの方が大きな問題であって、ほかに見落としがないのか確認することを重視していた」(市住宅建設課)
たしかに市議会でも見落としをめぐって追及を受けている。同時に検証の必要性も指摘されていたが、市にとっては見落としがないことを確実にすることのほうが重要だったということのようだ。
結局、再調査は単に分析をもう1度頼んだというだけにすぎない。検証的な位置づけが明確でなかった以上、これまで分析していなかった箇所を除くと行政費用としては無駄といわれても仕方あるまい。そして、再調査の位置づけをきちんとせず、漫然と同じ分析委託を繰り返したことが今回の混乱を引き起こしたのも間違いない。まさしく検証なき再調査の弊害といえよう。
市は独自の検証をしていないと認めている。そのため県保険医協会などが改めて3機関によるアスベスト調査・分析の検証を実施するよう求めてきた。今回情報公開で検証の委託がされず、その費用が支出されていないことが判明した以上、専門的な見地による適切な検証がされないまま再入札に至ったことは間違いない。行政的な判断により安全側の対応をしたことは事実だが、市が問い合わせた業界団体からは「検証可能」との返答が来ている。今後のためにもやはり改めて検証する必要があるのではないか。
神戸市職員として定年直前まで勤めた後に議員となった高橋秀典市議は「検証となると責任問題が発生するのでやりたがらない。それが役所の常です。契約が成立しているのに業務の見直しにつながりかねない検証はやりたくないというのが本音でしょう」と指摘する。
現場ではアスベスト除去の開始に向け着々と準備が進む。仕上塗材の除去開始は5月の予定だ。タイムリミットまであとわずかである。
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