◆「事業場が発生源」と環境省ら
実際に2021年度の住宅地域の総繊維数濃度は平均で空気1リットルあたりわずか0.18本(同省資料から算定)。つまり、2019年度の同37本は住宅地域と比べるとじつに206倍という高濃度飛散である。アスベスト繊維数濃度同28本でも156倍。いずれも異常な濃度といえよう。
すでに2019年度に指導権限を持つ行政機関や同社に連絡し、「対策の早期検討を求めた」と報告されている。
3月の検討会で改めて問題化したのは、2021年12月の測定でも同1本超のアスベストが検出されたからだ。
前出・小西委員は「おそらく工場の排気系統に不具合があるんじゃないか」と指摘している。
経産省北海道産業保安監督部鉱害防止課は「アスベストは吸わないに越したことはないので、対策を検討させている」と明かす。
同社リスク対策室は、「(2019年の)環境省測定後、操業状況や建屋、設備の点検はすべて行ったが異常は発見できませんでした」と説明する。また当時の同省測定前後に同社でも外部機関に委託して測定したが、総繊維数濃度が空気1リットルあたり1本を超えていないという。
「原因がわからない。現場自体がすべて蛇紋岩ということもございますけど、当社が原因なのかもともと(蛇紋岩からの飛散が)あるのかわからない」(同社リスク対策室)
現場はもともとアスベスト鉱山近くのため、周辺の土壌などにもアスベストが含まれているかもしれないとの認識だ。
しかし、2019年度の同省・検討会資料は「今回、石綿繊維数濃度が高濃度に確認されている地点は、工場南側の敷地境界に近い地点であった。特に第2期調査(12月)において、工場直近の地点で特に高濃度のアスベスト繊維が確認され、その周辺の調査では高濃度が見られなかったこと、風向から考慮し、より発生源と考えられる地点がないことから、事業場が発生源であると推察される」と報告しているのだ。
高濃度の検出があった場所はすでに述べたように、同事業所の排気口付近。何年も測定し続けて、近隣の旧鉱山周辺や住宅地域でも高濃度のデータは出ておらず、風向きからも「事業場が発生源」と考えるほかないというのが国や専門家の見解である。