池下卓衆議院議員。祖父と父が市会議員だった。(公式HPより)

 

昨年の総選挙後直後に「たった一日の任期で文通費が満額もらえるのはおかしい」と文書通信交通滞在費の在り方に異議を発して注目を集めた日本維新の会所属の池下卓衆院議員が、過去に赤字の政治資金パーティを開催していたことが、1月に刑事告発された際の告発状や政治資金収支報告書などから分かった。もしパーティに選挙区の有権者が参加していた場合は違法な寄付となる。(フリージャーナリスト・鈴木祐太

◆赤字の「船上ビアパーティ」を開催

池下議員の政治団体「池下卓後援会」の政治資金収支報告書には、大阪府議会議員だった2019年10月5日に「海の上のビアパーティ」という政治資金パーティを開催し、38万円の収入を得て74万2786円を支出していることが記載されていた。この政治資金パーティは約36万円の赤字ということになり、仮に池下議員の選挙区の有権者が出席していた場合、有権者への寄付に当たり法律違反となる。

この政治資金パーティに参加した大阪維新の会所属の甲斐隆志高槻市議会議員は、自身のツイッターに、「池下卓大阪府議会議員の船上パーティに出席し、神戸の夜景を満喫しました」と写真入りで参加報告をしており、神戸の夜景を見ながらの船上パーティだったことが伺える。

この赤字のパーティについて池下議員に質問したところ、「1月19日に政治資金収支報告書を訂正した」と回答があった。これは、池下議員が、父親から事務所の無償提供を受けていたことを記載していなかったことに併せて、父親からの寄付が法律の上限を超えていることで刑事告発された直後だ。刑事告発を受けた件に加えて、問題の赤字の政治資金パーティの件も訂正したとみられる。

赤字の政治資金パーティについて池下議員に質問をしたところ、
「パーティの現金収入(当日集金、事前集金)を誤って”その他の寄付”として処理していたため」
と回答が送られてきた。収入を38万円から73万円にし、「その他の寄付」も辻褄が合うように修正した記載があった。

池下議員は刑事告発後に政治資金収支報告書を訂正。クルーズ船でのパーティの支出を増やして赤字にしている。

 

◆修正しても「赤字」は解消されず

また「当日の出席者の中に池下議員の選挙区の有権者がいたのか」という質問に対しては、有権者が出席していたかについては回答がない。そして、「参加費は一人一万円、67名の参加者(6名は当日不参加)」とだけ書かれていた。

当日参加した67名と欠席した6名の73名から参加費を徴収すると73万円になる、という説明だ。しかし、当日不参加の6名は代金の対価を受けていないため、これは政治資金パーティの収入ではなく寄付扱いとしなければならない。つまり、パーティの収入は73万円ではなく67万円であり、このパーティの赤字は解消されていない。

池下議員が刑事告発された際の告発状には、複数の高槻市議会議員も参加していることから有権者でもある後援会関係者が参加していると推測できるとある。そうであれば違法な寄付に該当する。また、同じ2019年に行われた大阪府議会議員選挙への貢献の見返りならば買収の疑いもあることが指摘されている。

◆「違法行為だらけ。辞職すべき」と専門家

池下議員を刑事告発した神戸学院大学の上脇博之教授は次のように指摘する。
「入金のたびに会計帳簿にきちんと記載していれば、パーティの現金収入を誤って”その他の寄付”として処理することなど考えられません。

私の告発を知り、赤字が極少額だったかのように訂正したのでしょうが、そもそも政治資金を集めるためのパーティなのに経費を差し引いた純益収入が極少額になるというのは計画時点で大問題です。たとえその訂正が真実に基づくとしても、当日不参加6名分の計6万円はパーティ収入ではなく寄付になるので、やはり赤字ですから公選法が禁止する寄付に該当することに変わりはなさそうです」
と池下議員の会計処理の杜撰(ずさん)さを指摘した上で、さらなる疑念を指摘した。

「パーティは府議会議員選挙が行われていない年には開催していないので、その選挙で運動してくれた者らを接待したのではないかとの疑念も消えません。また、不参加分の寄付6万円をパーティ収入に含めたのは、政治資金規正法違反の虚偽記入罪にも該当してしまいます。違法行為だらけですから『身を切る政党』の議員なら潔く議員辞職すべきです」

池下議員は政治家になる前は、税理士として働いており「カネ」についてはプロフェッショナルだ。「身を切る改革」を1丁目1番地とする日本維新の会の政治家として、さらに会計のプロとして、今回の会計処理が適切だったと考えているのだろうか。

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

 

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