◆危機的状況で、さらに移動を繰り返す難民たち
2022年1月、日本にいる私のスマートフォンに、コスタリカのサンホセで出会ったある男性から「これから妻とパナマに行く」というメッセージが届いた。彼らも抗議に参加し国を追われていた。
それまでのやり取りで、「仕事がない」ことを、私は伝え聞いていた。パナマに行くのは、仕事を求めてのことだという。コロナ禍で経済的な問題がより大きくなっていた。「私たちはもうニカラグアに戻れない」という言葉に悲壮感が漂っていた。
避難先のコスタリカの経済が悪化しても、住み慣れた母国・ニカラグアには帰る場所ではなくなっていた。条件のいい場所を探してさらに国境を越えて移動する。オルテガ統治から避難した民の、先の見えない生活が続いている。(続く 7へ )
ニカラグアの40年
左翼ゲリラ・サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)を率いたオルテガ氏は1979年、ソモサ一族による独裁政権を倒し革命を成功させ、84年、大統領に初当選。90年の選挙で敗北するが、06年に大統領に復帰すると、14年、大統領の再選禁止規定を撤廃し、17年には夫人を副大統領にした。18年の反政府デモへの武力鎮圧では300人以上が死亡するなど、強権的な独裁政治が批判される。21年の大統領選で勝利し、4期連続5回目の大統領に就任した。
柴田大輔(しばた だいすけ)
フォトジャーナリスト、フリーランスとして活動。 1980年茨城県出身。2006年よりニカラグアなど、ラテンアメリカの取材をはじめる。コロンビアにおける紛争、麻薬、和平プロセスを継続取材。国内では茨城を拠点に、土地と人の関係、障害福祉等をテーマに取材している。
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