◆警察より怖い…誰もが顔色を窺う人民班長
一般住民の立場からすれば、人民班長はうっとうしいことこの上ない。協力者は次のように言う。
「人民班長は毎朝家にやってきてドアを叩き、さあ道路清掃の作業に出て来い、糞尿を集めて作る堆肥のノルマをチェックする、建設支援の金を出せ、などと求めるわけだ。加えて、いったいどうやって食べているのか、家に誰が来ているのかなども確認する。息が詰まりますよ」
うっとうしいからと言って、人民班長を無視したり軽々しく扱ったりは絶対にできない。彼女は、住民たちの生活と素行を知るうえ、「確認印」を押す権限を持っているからだ。前述した労力動員や支援ノルマなどを履行したことを確認するハンコだ。これがないと、配給や子供の進学、軍入隊にまで影響が及ぶ。
「人民班長は、安全局(警察)、保衛局(秘密警察)との手足となって住民たちを監視し、あらゆる行為を報告している。今では、人々は安全員より人民班長の方が恐ろしいと考えるようになった。個人情報から暮らしの隅々まで、すべてを知っているのが人民班長なので、誰もが悪く見られないように、顔色を窺いながら暮らすようになった」
権勢が増すと賄賂収入も増える。
「最近、他所から私の住む地区に商売に来た人が、宿泊登録を見逃してもらい、コロナの発熱チェックを保安員に報告しない条件で50中国元(約950円)を渡した」
人民班長は、今や金正恩政権の住民統制の要になっているのだ。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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