大阪高裁や地裁、簡裁が入る合同庁舎の法廷でアスベスト(石綿)含有が疑われる「白い粉」が見つかった問題をめぐり、同地裁は5月末に「不検出」と公表。中断していた工事も順次再開している。しかし、法違反の可能性も浮上しており、一連の対応は拙速で安全軽視といわざるを得ない。(井部正之)
◆耐震補強の振動で飛散?
発端は5月17日午前10時過ぎ、合同庁舎本館4階の大阪地裁の410号法廷で机や椅子の上にうっすらと白い粉じんが積もっているのを利用者から指摘されたことだ。同日午後8時過ぎの発表によれば、建物の耐火被覆に石綿が使用されていることから、同じ空調系の本館4階から6階西側の法廷などについて利用を停止。法廷を変更するなどして対応した。
同地裁は19日、粉じんが発見された410号法廷内やドア1つ挟んだ廊下、同じ空調系の6階610号法廷内の3カ所で前日夕方に実施した空気環境測定の結果、(石綿以外も含む)繊維の濃度が空気1リットルあたりで定量できる下限(0.5本)を下回っていた(定量下限値未満)と公表。そして27日、法廷内で採取した白い粉じんなどから「アスベストは検出されなかった」と安全宣言。その後粉じん対策として4階の法廷すべてで天井裏の清掃を開始した。今週中にも完了して、工事を再開するという。
しかし、一連の対応は拙速といわざるを得ない。石綿の調査や安全確認が十分とは言い難いのだ。
問題となったのは5階で実施している耐震補強工事だ。これは鉄骨のはりに地震の揺れを低減する「制震ブレース」を設置するもの。ところが真下に当たる4階の410号法廷の天井裏には、耐火被覆としてアモサイト(茶石綿)を含むけい酸カルシウム板第2種「タイカライト」が使われていた。一部は関連工事で3年前に除去していたというが、今回施工した鉄骨にはこの石綿含有建材が残されていた。
取り付け作業では、15.5センチメートルの床コンクリートに鉄骨の幅で5メートルほど電動丸ノコで切れ目を入れ、電動工具の「コンクリートブレーカー」で破砕。鉄骨を露出させた。鉄骨の突起物は電動丸ノコで切断した。コンクリートの破砕に2日、突起物の切断に1日かかった。直接は石綿含有建材を触っていないというのだが、その建材がある鉄骨に相当な振動を与える作業が3日間にわたって続いたことになる。真下の階で石綿を含む粉じんが飛散してもおかしくない。