◆法違反の可能性「認識」か

こうした筆者の指摘に対して、同地裁は耐火被覆に「劣化はない」と主張。また前述の調査結果から「他の法廷の天井内において、粉じんが見つかった場合でもアスベストは含有していないと判断できるため、成分分析等の調査は実施しない」と強弁する。

合同庁舎本館は1974年竣工。当時の施工であれば、すでに50年近い。耐火被覆の石綿含有建材について商品名で製造時期などを調べたところ、少なくとも施工から35年以上経過していた。

老舗の石綿除去業者は「非常に柔らかい、もろい建材なので、経年劣化や施工で角が取れたり破損したりなんて珍しくない。よく調べたら細かな破片なんていくらでも見つかるはず。何十年も経ってたら落ちてないなんてまずないですよ」と指摘する。

実際に別の階でこの耐火被覆が「ボロボロだった」との情報もある。今回施工したところだけ「劣化はない」など、さすがにあり得ないだろう。

同地裁によると今回の清掃は、照明器具を撤去して、手の届く範囲だけ実施するという。ところが使用するのは石綿の清掃に用いる真空掃除機だった。実質的に天井裏に落ちている可能性のある石綿の除去を目的としているといわざるを得ない。

同地裁も「念を入れた対応なのはそのとおり」と単なる粉じん対策でないことを認める。当然ながら労働者の石綿ばく露の可能性も認識しているはずだ。

こうした対応は労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)や大気汚染防止法(大防法)違反の可能性がある。

天満労働基準監督署は「清掃で労働者を臨時に就業させる場合、石綿含有の保温材などが劣化などによって発散するおそれがあるとき、保護具や作業衣などを使用させなければならない」と説明する。

また石綿則や大防法の施行通知やマニュアルで、天井裏に吹き付け石綿などがある場合に天井板を撤去する際には、届け出のうえ、外部に石綿が漏れないようプラスチックシートによる隔離養生のうえで場内を減圧し石綿を除去する(負圧除じん)装置を稼働させつつ実施するよう求めている。これは今回のけい酸カルシウム板第2種も対象である。

指導監督権限を持つ大阪市環境管理課や同監督署もそうした指導をしている。あくまで石綿の除去工事における規定であり、今回のように除去をともなわない場合は対象外だ。ただし、耐火被覆まで約40センチメートルと狭いため、清掃中に背中や腕などが触れてしまうことも考えられる。その際に少しでも建材の一部が落ちたりすれば、「除去」に該当することもあり得ると市と同監督署は認める。

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