◆最高裁が不適正施工を主導か
環境省大気環境課は「掃除をどう捉えるかもあるが、作業範囲にある耐火被覆の飛散のおそれがあるのであれば、特定粉じん排出作業に当たる」との見解だ。
だからこそ、そうしたグレーゾーンの作業では安全側に立って、上乗せ的な石綿のばく露・飛散防止の対応が求められる。そうした対応が「望ましい」ことは市と同監督署も認めている。
今回の施工は法違反となる可能性があるだけでなく、それを認識の上、そのギリギリを狙った脱法行為ともいえ悪質である。
この間取材してきたのは大阪地裁総務課だが、じつは工事の発注者は最高裁事務総局だ。同地裁は基本的にすべて最高裁に問い合わせて回答しているのだという。つまり、最高裁が法違反の疑いや脱法性を認識のうえ、安全軽視の対応を主導していることになる。
施工における石綿対策は事業者の義務であり、裁判所は基本的に責任を負わない。不適正な作業を承知のうえで事業者に押しつけることになる。元請けの飛島建設は「詳細についてはお話できない。発注者に聞いてほしい」(広報室)という。測定や分析を担った分析機関2社も「守秘義務があり、お話できない」などと回答した。
この間裁判所では何度も石綿を飛散させる事故が起きている。2015年の東京高裁や地裁などが入る合同庁舎における問題でも当初段階で法廷内の「白い粉じん」や空気の測定で石綿が検出されず、その後飛散が明らかになった。2018年に再び東京高裁などの合同庁舎の機械設備工事で飛散した際は、はつり作業を「油圧式」に変更して改善している。同年最高裁では、上階で耐震補強工事をしていてその下の大法廷で石綿飛散が発覚した。それらの事例とそっくりだ。今回またも同じ問題が繰り返されているとしか思えない。
最高裁では作業をしていない大法廷でモニタリングを継続したからこそ飛散も明らかになったしその後の対策につながった。今回の大阪地裁などの入る合同庁舎では本館4階では飛散防止どころか測定もしない以上、今後の工事再開で石綿が飛散してもその把握すらされないことになる。
事故の教訓とはなんだったのか。あるいはだからこそ、今回は不十分な調査と作業や現場の実態を無視した形だけの原因究明でごまかそうというのか。徹底した再調査のうえで改めて安全側で清掃やその後の耐震補強工事における石綿対策について計画を見直す必要があるはずだ。
この合同庁舎では今後も数年にわたって耐震補強が続く。最高裁が不適正工事を主導したといわざるを得ない今回の問題は、今後もずさんな石綿対策を繰り返す宣言となるのか。