中国との国境の川・鴨緑江の川辺で防護服を着て堤防修復作業をしている。2020年10月に中国側から撮影アジアプレス

<北朝鮮内部>コロナ関連実態調査(2)両江道も死者発生 「飢えか疾病かコロナか…死因わからない」 都市間の物流規制は緩和

金正恩政権が新型コロナウイルスの国内感染を認めたのは5月12日。50日近くが経った6月30日の国家非常防疫司令部の集計報告では、発熱者は474万4430人余りで、そのうち473万6220人余りが回復、死亡者の累計はわずか73人だ。だがこの数値に、北朝鮮国内から強い疑問とカラクリを指摘する声が上がっている。アジアプレスでは、北部地域に住む取材パートナーたちに5月12日以降、居住する地区でどれほどの死者が出たのか調査してもらった。栄養状態が悪く他の疾病を持つ住民が、コロナ発生確認後に数多く死亡している実態が分かった。(石丸次郎/カン・ジウォン

◆居住する人民班で調査

調査したのは北部の両江道(リャンガンド)と咸鏡北道(ハムギョンプクド)の計3都市、7地域。取材協力者が暮らしている地区と近隣の人民班で、5月12日~6月20日の間に発生した死者数を調べた。

人民班は最末端の行政組織で、概ね20~30世帯程で構成される。町役場に相当する洞事務所からの指示を伝達し、住民の動向を細部まで把握して当局に報告する役割を担っている。

金正恩政権がコロナ感染を認めた後、人民班長と防疫担当官が毎日、全世帯を回って一日に2~3回の検温を実施した。有熱者(発熱者)は感染の可能性大とみなして主に自宅で隔離させた。

死者が出ると遺体の搬出と火葬手続きを、人民班を通じて国が行った。人民班でカウントされた数値は毎日当局に報告・集計されたはずである。つまり取材協力者たちは、自身が住む地域の人民班に限れば、期間内の死亡状況についてかなり正確に把握できるのだ。

ただ、調査には以下のような限界があった。

1 コロナが死因なのか正確には分からない。
・首都平壌や高位幹部クラスは不明だが、北朝鮮ではPCR検査などの感染判定検査をほぼまったく実施しておらず、地方の防疫当局でも感染実態や死因を特定できていない可能性が高い。

・取材協力者たちも、伝え聞いたコロナの一般的な症状から自身や周囲の感染を判断するしかなく、これも推測の域を出ない。

2 地域が限られる。
・調査は北部の両江道と咸鏡北道のみで、他地域や首都平壌の情報には接近できなかった。また調査サンプル数が少ない。

このような限界があることを理解したうえで、報告をお読みいただきたい。

コロナ発生の非常事態を伝える朝鮮中央テレビの5月14日のニュース

◆3~5%程度が死亡の人民班も

・咸鏡北道A市

人民班は平均20世帯程度で住民は50~60人だ。自分の人民班では3人、近隣のふたつの人民班では4人、5人が死んだ。5~7人死んだ所もあるとい聞いた。

A市ではほとんどの人がコロナにかかったのではないか。私もかかった。農村の動員者の中でも出ている。熱が出たら自宅隔離になり、その家を消毒しに来る。そして中国製の解熱剤が1日分与えられて、それで対応は終わり。6月末時点で、感染しても国はほとんど放置状態だ。1~2日は辛いが問題ないというふうにみなされる。ただし、防疫規則は厳しいままだ。

当局はコロナで死んだとはほとんど判定しない。亡くなった人の多くが、もともと何らかの病気を持っていたので、死因をその病気だとしている。中にはまともに食べられなくて飢えて死んだ人もいる。今一番の問題はお金が尽きて食べられないこと。1日2食が当たり前で、1食しか食べられない人もいる。そこにコロナが流行して暮らしは本当に深刻になった。

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