◆作況は10年で最悪との声も
夏になり、農場では「絶糧世帯」に対して3日間の出勤免除を決めた。各自が野山に出て薬草や山菜などを採取して暮らしの足しにせよというわけだ。これらを売ることで農民たちはわずかながら収入を得ていた。
だが、これも今年はうまくいっていない。薬草や山菜などを買い取るのは貿易会社だが、中国との貿易が新義州(シニジュ)以外で止まっているため、買い取りがストップしているのだ。新型コロナウイルス禍の影響である。
農民たちは山に入ってツルニンジン、山菜を採っておかずの足しにしているという。一方で欠勤する農場員が増えて人手が足りず農場の仕事に支障が生じているとも聞かれる。
「A農場員たちによれば、今年の生産はこの10年で一番悪かったそうだ。肥料不足、コロナによる労力不足、さらに天候不順でトウモロコシに未熟なものが多いという」
A農場の調査だけをもって、北朝鮮農業全体を推測するのは難しい。だが条件の近い北部地域の状況は、A農場と大差ないものと思われる。なお、穀倉地帯の黄海道(ファンヘド)の農場についての確かな情報は入手できていない。
主食のトウモロコシの収穫は間もなく始まる。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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