◆領収証を入手
細田博之衆議院議長と出納責任者が昨年10月の衆議院選挙において、地元島根県の市議会議員や元市議ら16人に「労務費」という名目で、選挙応援に対する報酬を支払っていたとして、公職選挙法違反の疑いで8月2日に上脇博之神戸学院大学教授が松江地検に刑事告発した。この件はすでに週刊文春などで報道されているが、さらに9月20日までに5人の学者らが新たに松江地検に告発状を提出したことが分かった。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)
◆投票呼びかけの報酬なら違法
神戸学院大学の上脇博之教授の告発状によると、細田氏は2021年に行われた衆議院選挙の公示日だった10月19日に、現職の松江市議を含めた16人に対して「労務費」として合計9万7700円を支払った。これは細田氏の選挙運動収支報告書に記載されている。週刊文春の報道によると、労務費を受け取った全員が「ポスター貼りの対価」と認めているということだ。
公職選挙法では「ポスター貼り」であるならば「単純労働」として報酬を支払うことは認められている。しかし、週刊文春の記事では、報酬を受け取った現職の議員11人と元議員5人は、選挙カーに同乗したり投票を呼び掛けたりしたことも認めているという。選挙運動をした場合の報酬支払いは公職選挙法では認められておらず、過去の判例でも買収になるという判決が下されている。
告発状ではその判例を紹介したうえで、細田衆議院議長らが地元の松江市議らに支払った「報酬」は公職選挙法違反の運動員の買収に当たると指摘している。
◆「細田氏が知らないはずない」と専門家
告発をした上脇教授は次のように話す。
「細田氏は選挙の運動員に報酬を支払ったら買収になることを当然知っていたはずです。細田氏の選挙運動費用収支報告書によると収入総額は730万円であり、その全額が細田氏の政党支部からの寄付金と記載されていたので、選挙の支出について細田議長が無関心でいるはずがありませんし、報酬を支払った地元の議員や元議員が選挙運動をしてくれていたことを知らないはずがありません。ですから、出納責任者だけではなく細田氏当人も運動買収の罪で告発しました」
細田氏は現在衆議院議長を務めており、「選挙博士」と自他とも認めるほど選挙に詳しいと言われている。そんな細田氏が今回の報酬が選挙買収に当たると知らなかったのだろうか。
細田氏は複数の女性記者にセクハラをしていた疑惑が週刊文春で報道されている。また旧統一教会問題では、21年に衆議院議員会館で開かれた「日本・世界平和議員連合懇談会」など旧統一教会の関連団体の行事に複数回出席していたことが明らかになっている。
国会は「国権の最高機関」であり、細田氏はその長である。これらの問題については包み隠さず事実を明らかにし、事実であれば責任を取るべきであろう。
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた) 1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。