文在寅大統領を冒涜するために作られたビラの束 2020年6月の労働新聞より

最近、北朝鮮を取材するのも記事を書くのも、なんだか億劫になっている。理由は金正恩政権が世界に背を向けて閉じこもり、一向に自ら変わろうとせず、世間の北朝鮮に対する関心もすっかり薄くなってしまったからである。

今、北朝鮮では脆弱層に栄養失調が広がるなど、人道危機が発生しているのだが、日・韓・英語で記事を発信しても反応は低調だ。詮無いことのように感じてしまう。

◆南北対話への期待と高揚→落胆と嫌悪へ

7月に韓国に行って研究者やジャーナリスト、人権活動家と会合を持った。私の愚痴に対し、「いや、韓国はもっとひどいですよ」と、彼らは口をそろえた。

核・ミサイル実験を繰り返して危機を高めた金正恩政権は、2018年に入って一転して対話に出てきた。金与正氏がソウルに来て平昌五輪を観戦、4月には休戦会談場のある板門店で、文在寅(ムン・ジェイン)氏は金正恩氏と抱擁し、金正恩―トランプ会談も実現した。

世界中が北朝鮮の行方に注目し、朝鮮半島情勢が大きく動くように見えた。だが、韓国の人々が見せたあの時の高揚と期待は、今や蒸発してしまったかのようである。

北に対する疲労感のせいです

20年以上北朝鮮の人権活動をしてきた朴仁鎬(パク・インホ)NK投資開発研究員は説明する。

爆破される開城市の南北共同連絡事務所。2020年6月17日、労働新聞より引用

2019年2月のハノイ朝米会談が決裂してからというもの、北朝鮮は韓国に対する悪罵を復活させ、2020年6月には開城(ケソン)の南北共同事務所を爆破、2020年9月には、北朝鮮管理海域に漂流してきた公務員を兵士が射殺し、遺体に油をかけて焼くという蛮行に及んだ。ミサイル発射実験も止まるところがない。

文在寅政権は一生懸命やったけど、国民に過剰に期待を抱かせてしまった。結局、金正恩は変わろうとしなかった。韓国人はうんざりしてしまったのですよ

と朴さんは言う。

◆対北感情が急悪化…「反感がある」は78.1%とKBS調査。

韓国メディアの北朝鮮に対する関心低下も著しいと感じる。参考になるような記事はほとんど見かけなくなった。外国メディアの引用か、韓国政府の発表ものと北朝鮮国営メディアの紹介が大部分で、独自取材に基づいた記事を見つけるのは難しい。韓国社会の関心低下を反映しているのだろう。

韓国放送公社(KBS)は、日本の植民地支配から解放された8月15日に合わせて、毎年「統一意識調査」を実施している。14日に発表された結果は、「疲労感」を如実に表すものだった。

金正恩政権に「好感がある」という回答はわずか2.7%。一方で、「反感がある」は78.1%。そのうち「強い反感」は43.1%だった。南北対話が進んでいた18年は好感20.6%、反感35.4%、強い反感は15.3%だったので劇的に悪化したというしかない。

一方で、新型コロナウイルスに関しては何らかの援助をすべきだとの回答が8割を超えた。金正恩政権を嫌悪しながらも、人道面では手を差し伸べるべしという、韓国社会の余裕と成熟を示す数字だといえる。

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