◆保護者に危険の一部説明せず
それでも同課の寺口課長は「測定で(石綿は)飛んでないと確認しているので、同じ作業がされたと考えています」と強弁する。
しかし実際には測定は8月15日の作業初日1回だけ。当然そのほかの作業日に石綿が飛散していたとしても知りようがない。しかも初日の測定にしても午前中4時間だけで、午後に飛散していてもわからない。
実際には飛散の可能性があるのは市が認める9月の2日間に外壁撤去の4日間を加えた計6日間と考えざるを得ない。仮に測定結果のある半日を除外したとしても計5日半。市の説明は石綿飛散・ばく露のリスクを半分以下に過小評価していることは間違いない。
市大気・音環境課は「(測定で)確認はできてないのでまったくないとまでは言い切れない」と消極的な言い回しながら飛散の可能性を認めている。
ところが寺口課長は上記の説明を繰り返した。
悪質なのは、市は外壁材撤去時における電動工具の使用を認めた後に開催した小学校での保護者説明会でそのことを“隠していた”ことだ。筆者がこの件を指摘したのは10月17日で、21日同氏は外壁材撤去時における電動工具の使用を認めた。つまり、石綿飛散のあった屋根材撤去時と同じ電動工具を使った不適正な除去であることを知っていたにもかかわらず、市は児童らのばく露リスクにつながる石綿飛散を「2日間」と説明し続けている。
寺口課長は隠したことは否定し、「次に説明する機会がございますのでしっかり説明させていただきます」と答えた。しかし説明会の予定はないというから単なる言い逃れの可能性がある。また石綿飛散リスクがあったのは2日間との主張は変えていない。
さらにいうなら市は石綿飛散がほとんどないかのような説明をするが、電動工具を使っていなくても、石綿スレートをバール破砕した場合、最大で空気1リットルあたり3840本の石綿を含む繊維が飛散していたことが2019年4月の環境省委員会でも報告されている。最近公表された厚生労働省調査では同9900本に達する。電動工具を使えば間違いなく万単位の高濃度となるはずだ。
こうしたデータがあるため、2020年の労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)や大気汚染防止法(大防法)改正で、石綿を含む成形板除去時に「原則破砕禁止」との規定が盛り込まれたのである。