2階の住人の部屋の瓦礫の中にあったセーラームーンのシール。攻撃で人びとの生活が断ち切られた。(2022年7月・セルヒーフカ・坂本卓撮影)
2階の部屋。壁も窓が崩れ落ち、天井はたわんでいた。(2022年7月・セルヒーフカ・坂本卓撮影)

◆吹き飛んだ壁 響く悲鳴

1階の部屋にいた主婦、リュドミラ・チェバンさん(43)は、息子のサーシャちゃん(4)とともに、爆発で吹き飛んだコンクリート壁と板の下敷きになった。隣人と救助隊が瓦礫をかき分け、助け出された。

1階右がリュドミラさんの部屋。外壁が崩れ、部屋の壁もベランダも吹き飛んでいた。(2022年7月・セルヒーフカ・玉本英子撮影)
リュドミラさんと私が一緒にアパートに入ろうとしたとき、サーシャちゃんがひきとめた。「いやだ、入りたくない。みんなバラバラになるよ。ボーンって…」幼い子どもにも爆発の記憶が心の傷となって残っていた。(2022年7月・セルヒーフカ・坂本卓撮影)

妊娠8カ月だったものの、胎児とも無事だった。だがミサイルの破片で足に傷を負った。救急車に乗せられるとき、周囲でたくさんのうめき声や悲鳴が聞こえた。 あの声が耳から離れないという。

爆発でアパートが破壊されたリュドミラさんは、行政局が提供した仮住居で暮らしていた。保健機関の支援で、ルーマニアで出産の予定という。(2022年7月・セルヒーフカ・玉本英子撮影)

ゼレンスキー大統領は、この攻撃について「意図的に民間人を標的にした、ロシアのテロ行為」と強く非難。一方、ロシアの報道官は、民間人は狙っていないと繰り返す。

◆「これから生まれてくる赤ちゃんは…」

取材時、リュドミラさんは、行政局が提供した仮住居で暮らしていた。出産予定は9月中旬。保健機関の支援で隣国ルーマニアに一時滞在し、出産するという。

アパートのすぐ近くの保養施設にもミサイルが着弾。ここでは従業員1人が死亡した。(2022年7月・セルヒーフカ・玉本英子撮影)

「以前は東部地域からの脱出民が安全なこの保養地に避難し、身を寄せていました。いま、自分自身が子どもの安全を心配し、避難しなければならなくなるなんて…… いつ終わるかわからない戦争と、これから生まれてくる赤ちゃんの将来を思うと、やるせない気持ちだと顔をゆがませた。

「ここはただの保養地の小さな町。周囲に軍事施設はなかった」とセルヒーフカの住民たちは口をそろえて言った。ロシア軍との前線から遠い地域であっても、ミサイルがいつ飛んでくるかわからない。(地図作成・アジアプレス)

(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」2022年9月6日付記事に加筆したものです)

 

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