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◆吹き飛んだ壁 響く悲鳴
1階の部屋にいた主婦、リュドミラ・チェバンさん(43)は、息子のサーシャちゃん(4)とともに、爆発で吹き飛んだコンクリート壁と板の下敷きになった。隣人と救助隊が瓦礫をかき分け、助け出された。
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妊娠8カ月だったものの、胎児とも無事だった。だがミサイルの破片で足に傷を負った。救急車に乗せられるとき、周囲でたくさんのうめき声や悲鳴が聞こえた。 あの声が耳から離れないという。
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ゼレンスキー大統領は、この攻撃について「意図的に民間人を標的にした、ロシアのテロ行為」と強く非難。一方、ロシアの報道官は、民間人は狙っていないと繰り返す。
◆「これから生まれてくる赤ちゃんは…」
取材時、リュドミラさんは、行政局が提供した仮住居で暮らしていた。出産予定は9月中旬。保健機関の支援で隣国ルーマニアに一時滞在し、出産するという。
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「以前は東部地域からの脱出民が安全なこの保養地に避難し、身を寄せていました。いま、自分自身が子どもの安全を心配し、避難しなければならなくなるなんて…… いつ終わるかわからない戦争と、これから生まれてくる赤ちゃんの将来を思うと、やるせない気持ちだと顔をゆがませた。
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(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」2022年9月6日付記事に加筆したものです)
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