◆経費削減で屋根上に放置か
同小学校では体育館の骨組みだけ残してリニューアルする大規模改修工事を5月末以降に開始。市によれば、体育館の屋根、外壁、内壁、軒天、天井(一部)の成形板に石綿を含有していた(計1573平方メートル)。
発注仕様では割らずに原形のまま撤去することになっていたが、壁材、屋根材とも実際には電動工具で建材の一部を切断していた。その結果、9月5日に作業区画境界2カ所で最大で空気1リットルあたり25本のクリソタイル(白石綿)が漏えい。市の指導基準(同1本)の25倍、環境省の全国調査における住宅地域の平均の192倍飛散していた。
発注元の市学校整備課は撤去した石綿を含む波形スレートの屋根材について、「屋根の上に露出状態で平積みしていた」と説明。
監督・指導を担う市大気・音環境課が9月7日に現場を立ち入り検査したところ、「廃棄物は測定地点のAB側(体育館の北東)に置いてあった。天井屋根の上にそのまま積んでいた」と認める。
しかも同課によれば、石綿含有廃棄物の仮置き場は別の場所で、なにも置いておらず、全量が屋根の上に放置していた状態だった。廃棄物の処分もしていなかったという。
施工業者がクレーン付トラックを保有しておらず、レンタル費用を浮かそうとした可能性がある。毎日仮置き場に運ぶとそのつどレンタル費が掛かるが最終日に一気に降ろせば半日~1日分に減らせるからだ。
しかし、大量の石綿波形スレートを斜面状の屋根に積んでおくのは危険がともなう。積み過ぎれば、自然に崩落することもあるし、振動などで落ちてしまうことも考えられる。まして現場は小学校である。児童らの上に崩れ落ちたら死亡事故が起きかねない。
結局、石綿飛散の指導後、養生シートでくるんだうえで屋根からクレーンで降ろしたという。
ところが同課は「法違反はない」と説明。市の指導基準で「廃棄物の適正な管理」として飛散防止や一時保管場所への集積が位置づけられており、これに抵触する可能性があるとして法には基づかないが指導する意向であることを10月17日筆者の取材に明かした。