横浜市の山王台小学校(磯子区)で9月に起きた強力な発がん性を持つアスベスト(石綿)が基準を25倍超えて漏えいした問題で、市は10月29日から工事を再開した。石綿の飛散防止対策は当初より強化されたものの、保護者の要望を一部無視した。(井部正之)
◆外壁は土曜、内装は平日
同小学校では体育館の骨組みだけ残してリニューアルする大規模改修工事を5月末以降に開始。市によれば、体育館の屋根、外壁、内壁、軒天、天井(一部)の成形板に石綿を含有していた(計1573平方メートル)。
発注仕様では建材を割らずに原形のまま撤去することになっていたが、壁材、屋根材とも実際には電動工具で建材の一部を切断。その結果、9月5日に作業区画境界2カ所で最大で空気1リットルあたり25本のクリソタイル(白石綿)漏えいが発覚した。市の指導基準(同1本)の25倍、環境省の全国調査における住宅地域の平均の192倍に達する。
市は速報値の届いた5日夜、作業の停止を指示。6日以降の石綿関連作業は中断された。
ところが10月17日に再び作業場の内外で同1本超の石綿を含む可能性のある繊維を検出。すべての作業を停止させた。結局、28日に基準超の石綿検出はなかったとして翌29日に試験施工。その後工事再開した。
今後の作業では高濃度の石綿飛散リスクの高い電動工具の使用はせず、手工具のみで波形スレートのボルトを切断し、割らないように手作業で取り外す。石綿の飛散を防止する湿潤剤も使用することになった。測定も箇所を増やして毎日実施という。
また保護者らの要望により、屋根材の撤去については児童らが学校にいない土曜日だけに限定することも決まった。
発注元の市学校整備課の寺口達志課長は「検査しながら立ち会いもした。測定結果も(指導基準の)目安値(同1本)以下ということで問題なく施工できた」と強調する。
だが、市は内装材の撤去については児童らが在校する平日(1日と7日)に実施させている。
内装材も石綿を含む。にもかかわらず、どうして違いが生じているのか。