◆「子ども不在時の除去を」と専門家

市によれば、保護者の要望は10月14日、15日の説明会で出された。

10月下旬、市学校整備課の寺口課長は「地域の方の要望で、一番リスクが高いだろう屋根材の撤去は生徒がいない日にしてほしいということだったので、できるだけ安心していただけるよう土曜日にやることにした」と説明した。

保護者が同じ石綿を含む内装材だけは子どもの居る日にやってよいなどと本当にいうだろうか疑問だった。

11月に改めて確認したところ、寺口課長は保護者の要望が実際には屋根材に限ったものではなかったことを認めた。つまり、保護者の要望は「危険のある作業は子どものいない日にやってほしい」との意味だった。筆者の取材に対して事実と異なる、市に都合の良い説明をしていたことになる。

27日の説明会で市は「屋根についてはとくに飛散させてしまったという事実をふまえて土曜日にやります」と説明。その代わり「内装は平日もやらせてほしい」と理解を求めた。市によれば、保護者から反対の声は上がらなかったという。

しかし市の対応には疑問が残る。

保護者の要望は、すでに一度石綿飛散があったことから市の説明が信用されず、それでも我が子を守るための切実かつ合理的なものだ。

事実、石綿の被害者支援や予防に取り組むNGO(非政府組織)「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」はかねて「アスベスト除去工事を子どもたちが在園・在校中に実施して、子どもたちにアスベストを吸わせてしまう事故が続いています」と指摘してきた。予防策として「デパート等は夜間工事が一般的」との実態から、「アスベスト除去工事は、子どもたちがいない日曜日と平日夜間に限定、実施する」ことの重要性を訴える。

2005年6月末に兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場周辺で環境ばく露とみられる中皮腫が次々明らかになった「クボタショック」以降、石綿除去工事は子どもがいない夏休みなどに実施するのが通例となった。ところが石綿被害リスクがまたも甘く見られるようになった結果、不適正事案が相次ぐようになった経緯がある。

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