ミサイル発射の功労者との記念撮影に金正恩氏と収まった娘。韓国政府は名前を「ジュエ」と推測。2022年11月の労働新聞より引用。

北朝鮮は11月18日に「火星砲17」とされる長距離弾道ミサイルの発射実験を行い、金正恩氏は現地視察に娘を同行させた。さらにミサイル開発に寄与した関係者との記念撮影にもともに収まった。写真を目にした北朝鮮の住民はどのような反応を見せたのだろうか? (カン・ジウォン/石丸次郎

韓国当局はこの娘の名を「キム・ジュエ」だと推察している。朝鮮労働党の機関紙・労働新聞などは、「敬愛する総書記同志におかれては、尊貴であられるお子様と一緒に撮影場に出られた」と、娘に対しても尊敬語を使っている。

「キム・ジュエ」が登場したことには北朝鮮国内でも関心が高いようである。アジアプレスでは北部地域住む2人の女性の取材協力者に、国内の雰囲気や感想を聞いた。2人は別の地域に住んでいる。以下は現時点での個人的な見解であることをお断りしておく。

◆「すごい秀才らしい」との噂

――金正恩氏の娘の写真が公開されました。

A  娘が現れたといってもやたらと話できませんよ。人が集まると「何歳だろうか?」とか、「母親に似ている、父親に似ている」と言い合うくらいです。そもそも私たちは金正恩の年齢も知りません。子供が何歳なのかは気になりますね。

――娘が登場したことに驚きましたか?

A  驚くほどではないです。公開されていないけれど金正日も金正恩を現地指導にたくさん連れて行ったと言われているので、(娘を)連れて歩くのだろうと言っています。

――人々はどのように話していますか?

A  (娘は)とにかく頭の良い秀才で、一度見たことはすべて覚えるすごい記憶力だという噂が流れています。秀才教育を受けているだろうし、一般の学生とは一緒に勉強しないんでしょうね。

◆私たちとどこが違うというのか?

――批判的な声はありませんか?

A  ある生活が苦しい家の老人が、「元帥様の娘なら世の中に羨むものなんてないんだろうな」と言っていました。そんな発言も、たぶんすべて保衛部(秘密警察)に把握されることでしょう。

――忌憚なく話せる親しい人はどんなことを言っていますか?

A  私の親戚だけれど、「(金正恩氏は)神様のような存在だと言っているけれど、子供もいて皆同じ人間だ」と言っていました。私も一般の人間と何が違うのかと思う。でもこんなことでも金正恩の悪口を言ったことになるので、どこでも話ができるわけではありません。

※「この世に羨むものなし」は北朝鮮当局が昔から唱える標語の一つで、北朝鮮は首領様の治める万人平等の社会であるので不満を許さないというニュアンスが強い。

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