◆「携帯検問」でメールまで覗く
当局は青少年の携帯電話使用について、2019年頃から統制に乗り出していた。街頭での取り締まり検問をしばしば実施し、端末に保存されている写真や動画、文書のチェックを行っている。はては「通報文」と呼ばれるメールの内容まで覗き、韓国風の言い回しを使っていないかまで見る徹底ぶりだ。その延長に今回の取り締まりがある。
「もし問題映像があった場合、電話機は没収、学校と青年同盟、家族に連帯責任を問うと当局から公式な通達があった。人民班会議でも、変な映像は一切撮影するなと警告された」
◆携帯での情報拡散を警戒する金政権
この数年、北朝鮮では令状なしの抜き打ちの家宅捜索、持ち物検査などが茶飯事だが、真っ先に確認するのは携帯電話のデータなのだそうだ。咸鏡北道(ハムギョンプクド)に住む別の協力者は次のように言う。
「もう携帯電話を持つこと自体に不便を感じるようになった。引っかかるとうっとうしいので、私は通報文もカメラも使わなくなった。通話だけ。こんな面倒を人民にかけるなら、いっそのこと携帯電話を使えなくしろと不満をぶちまける人もいる」
それではなぜ、金正恩政権はここまで携帯電話の使用を統制するのだろうか? 理由は二つあると考えられる。一つは学生、青少年に対する行動と思想の統制強化だ。北朝鮮政府は2021年3月に「青年教養保障法」を制定し、青少年の管理統制を本格化させている。
二つ目は、携帯電話端末というパーソナルな媒体への警戒心だ。国内で発生した事件、事故、社会現象を映した写真や動画が、当局がまったく管理できないところで拡散していくことを恐れているものと思われる。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。
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