◆実態と異なるとの委員証言も
その後の議論で、4日間のうち3日実験に参加したという大阪アスベスト対策センター幹事の伊藤泰司委員は、ほとんど石綿が不検出とのデータについて、「少しほっとできるような内容が含まれている」としつつも、「あくまでも今回の実験は、説明のあった今回の実験の範囲の中での事態であって、現実はやっぱり違う」と感想を述べた。
その上で「たとえば、私(実験で)ドアの開け閉めをやりましたけど、小さい子ども、どっちかというと女の子が開け閉めするような感じでやってくれということだったんで(その通りに)やったんですけど、おそらく子どもは思いきりピシャンとやりますよね」と市から指示があったことを明かした。
ビニルボールを点検口内に投げる実験では玉入れのように下から軽く投げていたことから、伊藤委員は「ボールの投げ入れなんて、あんなお上品なことはたぶん子どもはやらなくて。サッカーボールを蹴り込むようなことをやっていたと思うんですね」と疑問を呈した。
また天井裏に直径90センチメートルもの大きな吹き付け材の塊が落ちていたことに関連して、阪神・淡路大震災など「過酷な状況で起こる」として、今回の実験は塊を天井裏に落としただけだが、大きく揺れたりする際の石綿飛散についても考慮が必要だと指摘した。
ほかの委員は「何十年に一度のことを考慮する必要はない」などと伊藤氏の主張に賛同しなかった。
東座長はドアの開閉について「それなりに大きな音もしていた」と反論。震災については可能性を否定しなかったものの、「いろいろ議論したり、情報を集めたりするなかでこれ以上のことは見当たらなかった」として実験の妥当性を強調した。結局、今回の実験結果からリスク評価する方針が示された。
会合後、改めて伊藤氏から話を聞いたところ、実際には市から「小さい子ども」や「女の子が開け閉めするような感じ」と発言はなかったが、「平常時と同じようにゆっくり開け閉めしてくださいと言われたんです。それを小学生の女の子がやるようにと表現した」と明かす。
氏によれば、実験時にも市と扉の開け閉めの仕方をめぐってやり取りがあった。市から「普通のゆっくりした」開け閉めを要求されたが、「男の子は思い切り開け閉めする」と反論。市側もうなづいていたが主張は変えず、従うしかなかったという。
「子どもは思いっきり閉め閉めたり、全力でボールを投げたりってことを遊びのようにやるじゃないですか。相撲をとって扉に強くぶつかるとか。そういう場合に(石綿が)飛散すると思います。そういうシビアな事態は想定していないというのが今回の実験でした。僕はそのことをずっと主張してたんです」(伊藤氏)