体育館改修時にアスベスト(石綿)が外部に漏えいして問題になった横浜市の山王台小学校(磯子区)で、関連する建材の除去作業を完了し、周辺大気の測定結果は「すべて目安値以下」だったという。(井部正之)
◆一部要望無視し平日に施工継続
同小学校では9月5日、体育館改修で屋根材(波形スレート)の除去作業中に作業区画の境界で空気1リットルあたり最大25本のクリソタイル(白石綿)を検出した。市が定める指導基準(同1本)の25倍であり、住宅地域の全国平均(2021年度:同0.13本)と比べるとじつに192倍に上る。
石綿飛散の原因は、作業計画に位置づけがない電動工具(ディスクグラインダー)で波形スレートの一部(1カ所につき直径3~5センチメートル)を切断していたことだ。計画では屋根材を原形のまま撤去することになっていたが、ボルトがさびて外れなかったという。
飛散事故後、保護者らは危険な作業は子どものいない日にやってほしいと市に要望した。市は石綿を含む屋根材の撤去は土曜日に限定。ところが一部要望を無視し石綿含有の内装材撤去は児童が学校にいる平日に強行した。
市建築局学校整備課によれば、作業は湿潤化のうえ、石綿飛散リスクの大きい電動工具の使用はせず、手工具のみで波形スレートのボルトを切断し、割らないよう取り外した。石綿を含む建材の除去は11月19日で完了した。作業日は毎日午前中に作業区画の境界で測定しており、空気1リットルあたり石綿を含む可能性のある繊維(総繊維)が「すべて目安値(1本)以下でした」と同課は安全性を強調する。
体育館改修は2023年2月末までの予定。仮設倉庫や仮囲いなどの撤去は3月にずれ込む可能性もある。
市は今後、石綿飛散による児童らの健康リスク評価を本格化させる方針。ほかの自治体における同様事例では第三者の専門家による検証委員会を公開実施して検討するのが通例だが、横浜市は「委員会はしない」(学校整備課)と明言。10月下旬に専門家1人に依頼する方針として、すでに内諾を得て打ち合わせもしていることを明かしていた。
12月22日に改めて確認したところ、担当者は「リスク評価をしていただく先生は内々には決まっていて、前提条件を別の先生にご相談しようとしているところ」という。ただし「委員会はいまのところ考えてない」(同)と繰り返した。